第9話 紫髪の道化



「………クッ! 例えこの身が穢されるとも、我が心までは」

「プ………、アッハハハハハハハハハハハ♪ ま、まさか実在するとはな、そんなセリフを吐く者が。クフフフフフフフフフフフ♪」


「な………わ、嗤うな……」

「フフフフ♪ とはもっと潔の良い者かと思っていたぞ? 事、囚われの身の尋問じょうじにおいてもな」


「う、うるさい! 穢したいのならば早くしろ、俺は臆したりなどしていない!!!」

「嘘を吐け、震えているぞ? この処女ウブめが♪」

「な、震えてなど………」



 我が最終防衛線パンツをも突破した魔女の右手は、ヘソ下辺りで動きを止める。クネクネと、ミミズかヘビの如くに焦らし蠢めく指の感触が殊更気色悪い………。

 ヤ、ヤるならヤれ! 俺は、俺は………。



「フフ、存外可愛いなお前様♪ 軽い冗談、のつもりだったのだが………、このまま喰べてしまいたくなるほどに」

「………フン、好きにしろ。ただし俺とて、自らの舌を噛み切る程度の事は容易いぞ」


「あぁ止めとけ止めとけ、迷信だあんなモノ。痛いだけで死にはせん」

「まるで噛み切った経験ことがあるかの如き言い草だな………」


「クフフフフ♪ お前様よ、生きることが出来ると思うのか?真っ当に。

 ただ幼気なだけの小娘が、こんな得体の知れない輝石モノをその身に植えられて………。お前様が聖女わたし達を毛嫌する理由は知らん。知らんが憶えておけ?これだけは、


 悲劇をその輝石むねに抱えるのは、お前様だけでは無い。他の聖女も皆、何かしらの真っ黒な呪いやみをそのと共に宿している。多かれ少なかれ、な………」



 奇跡の代償。

 後に思えば、変わらずに不敵であった魔女の紡いだあの言葉。一々と大袈裟なる道化の如き振る舞いを見せる紫髪の魔女にも、その妖と煌めく紫の輝石ちくびに、何かしらのの影が宿っていたのやも知れない………。



 ただ一つ、俺の下着パンツに片手を突っ込んでいなければな!!!!!






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