第7話 走馬の再会



『浦島一灯流、刀術壱ノ型・黒椿』



 風刃の結界を無理矢理に突き破り抜き放った黒き神速の一灯は、翡翠の髪色をした新たな小魔女しょうじょの頸を目掛け流れ行く。


 太郎の名を継ぎ幾星霜、浦島の一灯において最速を誇るこの抜刀の黒技は皆一様。さながら椿の花が如く、ポトリと命を散らす。



『ハハハ♪ 朔夜よ、ま〜た眉間に皺が寄っておるぞ? 女士たる者。敵と対すれど、常に慈愛の心を以って此れを斬るべし!


 無闇矢鱈と斬り捨てるだけならば、それは悪鬼羅刹となんら変わらん。


 だから笑え、冥土の土産に絶世の美女の微笑みをくれてやれ。この俺の如くな♪ ナ〜ハッハッハッハ♪』



 先代の姉様ジョンより賜った女士の心得、唐突に回顧したその言葉と高笑い。………………師匠せんせい? 私はもぅ、笑えません今でも意味がわかりません



(カラン、カランカラン………)


「み………や?」

「え!?」

「美夜!!!」

「え〜〜〜〜〜!!!?」



 ポトリと落ちるはずだった小魔女しょうじょの首。

 しかし翡翠色の首の代わりと地を跳ねたのは、我が愛刀・白夜であった。



「良かった………、本当に良かった」

「あ、あの、全然良くないです。放して………」

「嫌だ! もう絶対に放しはしない!!! 二度と放したりするものか………」



 髪色も、背格好も、あの頃とは全く見違える。

 それでも俺には一目で分かった。この翡翠の髪色をした疾風を操る小魔女びしょうじょが、



「いいや放せ。その娘も私の教え子だ………」



 俺の愛する、美夜いもうとであると!


 パチッ!っと弾ける紫の閃光。

 全身をビリビリとした衝撃が走り抜けると時を同じく、俺の胸の中から美夜が離れていく………。俺の可愛い美夜が、愛する妹が!


 美夜、美夜。美夜!!!


 走馬の回し絵が如く、小間切れに事切れ行く意識の中。手を伸ばす俺を見つめる美夜いもうとの顔に、笑顔は………無かっ……………た。






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