第3話 月下の邂逅


(………様、姉…様。起、てくださいねぇね様。もう朝ですよ? 姉ね様?)


 私は別段、朝に弱かったわけでは無い。

 ただ私は、あの小さな手に起こされるが好きだった。

 ただ私は、あの小鳥のごとく愛らしい囀りに目を覚ますのが好きだった。

 私は、美夜いもうとと過ごす何でもないあの日常が、ただただ幸せ好きだったのだ……………。



 ************



「よぉしリリア、かかつダッシュで見つかる前に一気に突破するわよ♪」

「ハワワワワ、フレアリスさん静かにダッシュだなんてそんなの、む、無理です〜」

「諦めちゃダメよリリア! 良い?門限にはちょ〜っと間に合わなかったけど、アレを見なさい!」

「………門、ですか?」


 「もっとよく見なさい。門限は過ぎたのに、今日は未だ門が閉まって無いでしょ? て事はねリリア、今駆け込めばセーフ♪ってことでしょ?」

「フ、フレアリスさん? それはちょっと違うんじゃ………」


「リリア。私はね、この国にはルールと言うな法則があると知っているわ………。私、この法則の存在を知った時すぐに理解したの。

 この素晴らしい法則を発見した先人達は、きっとこう言いたかったのだって。


『え、何? 一瞬、ちょこっとだけならそんなの落ちて無いのと同義いっしょでしょ?』


 って。つまりね、ちょっと位は大体大丈夫ってことなのよ♪(なのよ、なのよ……のよ)」



 意識を取り戻して凡そ四半刻、ガラガラと続いていた揺れが漸く停まった。

 後ろ手に縄を打たれた俺を乗せる荷車の周囲に気配は三つ。一つは荷車を引き、都合の良い言を得意気に吐き散らしている赤髪の少女。もう一つは後方であたふたと荷車を押す、あの青髪の眼鏡少女のもの。そして最後の一つは………。



「さぁリリア、最で最に駆け抜けるわよ♪」

「ハワワワワ、フレアリスさん待ってください〜」


 ガラガラと再び勢いよく走り出す荷車。されど勢いに乗った荷車は、門前にてあわやと急停止する。


「ちょっとアンタ!急に飛び出したら危ないで………」

「よぉフレアリス、良い月夜だな?」

「ゲッ!!! せ、先生!?」

「おいおい、人の顔を観るなりその反応は無いだろう? なぁ、リリア」

「ハワワ、こ、こんばんは………」


 赤髪微少女の前方、城門の陰より現しその気配おんなはなるほど。師と呼ばれるだけはあり、漂う気配は二人の小魔女の比では無い………。




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