第2話 赤き横槍


「い、いざ、尋常に!」


「も、もう限界ムリですーーーーーーーー!!!!!」

「(チッ!)そこまでよ、変質者! 『小火球(チビフレア)!!!』」


 眼鏡少女の限界さけび

 それに何故か残念そうな舌打ち混じりで応じた赤い人影は、路地の出口側より飛び出ると俺達目掛け右手のを振る。


「クッ!!!!!」


 杖より放たれた、三連ねの火炎弾。

 眼鏡少女を突き飛ばす余計な一手間が仇となり、着弾の爆風で盛大に吹き飛んだ俺の身体は、そのまま後方のレンガの壁へと叩き付けられた。


「エ〜〜〜ン、フレアリスさん遅ぃです〜! 後少しで私、私ぃ〜」

「あー、ごめんごめん。 なんかこうい感じだったから、つい」

「ついじゃ無いですよモォォォォォ、スっごく怖かったんですからぁ〜〜〜〜〜(ポカポカポカポカポカポカ)」


 なんとも微笑ましいムカつく少女達の話し声が、キズに障る………。


「………ウッ」


 頑強なるレンガ壁、その中央にご立派な勝手口をこしらえる程派手に叩き付けられた俺のダメージは、辛うじた受け身の所為か意外にも浅い………。

 とは言え、打ち付けた頭部には視界が染まるに余りある出血もあり、全身にはビリビリとした余韻も未だ鮮明。

 正直これは、元服を済ませた俺であっても結構キツぃ………。


「さてと、観念しなさい! フフン♪」


 そんな重傷血みどろの俺を見下す嘲笑うかの如く。

 後方より現れしもう一人の白外套ローブはツカツカと、さも勝ったわ♪ と言わんばかりに腰に左手を当てながら俺の眼前に杖を突き付ける………。


「ハワワワワ………フ、フレアリスさん、一般人さん相手にちょっとヤリ過ぎなんじゃ」

「フン! 良いのよこれくらい。

 この変態に一体何人の女の子のお胸がになったと思ってるの? むしろこの程度じゃ全然足りないくらいだわ♪」


 宵の闇………人の域を超えて輝く、赤き髪。何より先に見せた人外の業こそ動かぬ証に相違無く、


「………きだらけだな」

「あら♪ 何か言ったかしら、変質者さん」

「………其処は既に間合いだと、言っている!!!」

「ヒャッ!」


 動けぬと、括った高が隙を生む。


「………あ、アレ? 痛く、無い?」

「ハワワワワワ! フ、フレアリスさん、服、服、服!」

「へ?服………?キャーーーーー!!!」


 パラパラと、正中より縦半分にずり落ちる衣服。

 外套ローブから下着パンツ、その総てが肌けた時。一糸纏わぬ少女のかな胸元に現れたのは、キラキラと光を放つ、赤色の輝石チクビであった。


「赤………ハズレか」

「誰の……、誰の胸が小さいハズレdeathってぇーーーーー!!!!!」


 メシメシ、ベキベキと。

 これまでの生涯に覚えの無い異音しょうげきを最後に、俺の記憶は一旦の幕引きを迎える。何となく、薄ボンヤリと記憶にのこる最後の光景は、涙目ながら真っ赤に炎立ち上る紅蓮ノ拳を俺の目掛けて振りかぶる、赤髪ぜんら聖女まじょの艶(?)姿………………。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る