04 KOBANって小判みたい

 つぎの青信号で横断歩道を渡った。

 ちょうどまわりに誰も歩行者がいない。


 気にしてもしょうがないから、もうトラックのほうは見ないことにした。

 ドンときて一瞬で死ねればそれがいちばん良いし。


 そう思うと気がすこし楽になって、鼻歌でも歌いたい気分。

 トトロの歌でもと思ったけど、だいぶやけくそ感が増すのでやめておく。


「わたしは元気~、ってほどじゃない」


 そりゃあね。


「歩くの大好き~、ってこともない」


 あ、結局歌ってるわこれ。

 やけくそやけくそ。


 と、そこで。

 まえのほうから騒ぎが聞こえてきた。


「え、ヤバっ。あそこ交番あるとこじゃん」


 交差点にある小さな交番のまえで、男女がなにか揉みあっている。


「やめなさい! これは渡せません!」

「いいからよこせよ!」


 女性はよく見かける若いお巡りさんだ。

 腰にまとわりつく男は40代くらいのおじさんで、見たことはたぶんない。


「さっさと外せってば!」

「無理です!」


 最初、下着を脱がそうとしているのかと思ったけど、あれはちがう。

 拳銃をとろうとしてるんだ。


 ……なんか読めてきた、あたしの死因。

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