01 うまれいずる悩み

 占い師さんのいた十字路からすこし歩いて、あたしは本当に親にLINEすることにした。


「でも、なんていえば良いんだか」


 これから死にますって書いたら遺書みたいだし。

 ん? どのみち死ぬこと伝えるわけだから遺書は遺書なのかな結局。


 うわー、遺書。

 遺書って真顔で書くやつじゃん。

 怖っ。

 あたしそんな深刻な悩みとかないんだけど。


 しいていえば、さっき美人の占い師さんに死の宣告されたのが最大の悩み。


「もう簡潔に、『ありがと、さよなら』でいっか?」


 いやそれも遺書感ありまくるし!

 おかーさんびっくりしてパート抜けて電話かけてきちゃうよ。


 ……まあ、どうあがいてもあたしが突然死んだらびっくりさせちゃうか。

 そのうえ遺書みたいなLINEがきてたら、もしかしてジサツって思われちゃうかも。


「ダメだ。おかーさんにそんなの送れない」


 そうだ、おとーさん。

 おとーさんならワンチャン?


「てか、あたしってばお父上様にLINE送ったことあったかな……?」


 送った記憶がないようなと思ってリストを見る。


 あった。

 さすがにあるにはあった。


 最後のトーク履歴は――


「うーわ、高校受験で本命落ちたときのやつ。何年前よ」


『落ちたー。ママにごめんって伝えて』

 ……だって。


「いや自分で言おうよ、それは。

 どんなに言いづらくても、いっぱい心配かけたんだから」


 過去の自分にツッコんで、そんで、気づく。


「ちゃんと送らなきゃだ」


 でも、なんて書く?

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