3.まるで性格診断テストだな

こなくそ精神を燃やしてタブレットに向かった俺だが、チェックボックスや記入欄の多さに早速気が滅入ってしまった。


「ふふふ、お兄さんは特に飽きっぽそうな顔してますもんね。」


「うるせぇふわふわ妖精! こちとら町ではしぶとさでぶいぶいいわせとるんじゃい!」


「いかつい方言っぽく言ってもこわくありませんよーだ! さっさと進めたらどうですか〜!」


とまあサピーがやたらと煽ってくるので、こちらもムキになって記入を進めていく。


(ものごとを決めるときは、チームの中心で話の舵を取るほうだ……これはNoだなぁ。

 一人でいる時間を必要とするほうだ……う〜ん、一人も好きだけどほどほどにかな。ややYesで。)


こういうときの「どちらとも言えない」ほど選びづらい選択肢ってないと思う。

わからなくても、なんとなく片方に寄せた解答を書いてしまうものだから、結果も自分よりちょっと過激に出たりしてないだろうか。


(この中から特に興味があるものを3つ、興味がないものを3つ、順番に記入…と。)


一覧には、趣味と呼ばれるものが全般入っているようだった。


こういうときにスポーツとか武道が好きだと有利なのだろうが、実際に興味がないものを書いても楽しめるとは限らないだろう。

好きなものには素直になるのが一番だ。


(素直が一番。一番成長するぞ。)


「古典ホラーゲームの変なエンディングのことなんか考えてないでほら、入力は済んだんですか?」


「あと少しだから待ってくれよ、このせっかち光源〜。」


「なんですかせっかち光源って!? もうしらない! 思いっきり変なキャラにしてやるんだから!」


「プレイヤー差別は良くないぞ! 平等に扱わなきゃ! いくらAIでも運営に消されちゃうって!」


「ふーんだ。 私はエリートAIですから、運営も私にあまあまですからね! むしろお兄さんがどんどん不利になってますよ!」


「えっ!? 早く言ってくださいよサピー様ぁ! やるからには楽しみたいんですよぉ!」


「あ〜もう気持ち悪いですから突然媚びないでください〜! 冗談ですよ冗談! ちゃんと楽しめるように作ってあげますから! サイショノハユルサナイケド」


「え?なんて?」


エリートAI様と喋っている間にやっとの思いで空欄を埋めた俺は、サピーにタブレットを返却する。

光の玉がどうやって端末を持っているのかは不思議だが、サピーは目の前に浮かべたタブレットを読み始めた。


「お兄さん、名前はゴローで大丈夫です?。同一、あるいは似た名前で登録してる人もいますけど……」


「登録できるならそれで頼むよ。使い慣れたあだ名だし、プレイヤー達も区別して呼んでくれるだろうから」


「そうですね! 職業名や種族名をつけて呼ばれたり、名を上げれば二つ名がついたりしますから、混乱するのは最初の最初だけだと思います。

 では、ゴローさんで登録しちゃいますね!」


「ありがとうサピ子さん」


「サピ子……もうサピ子でいいです。今までで一番マシなので。

 おすすめ種族やスタート地点、能力値なんかに関わる前半部分はおいといて……

 ゴローさんの関心は『食事』『旅行』『買い物』ですか……なのに興味のない順だと『キャンプ』『料理』『ドライブ』と……はぁ。」


「んん? もしかして俺、いまAIに残念がられてる……?

 しかたがないだろ。お金を払えば移動も食事も睡眠も楽しく快適にできるのに、なんで過程まで頑張らなきゃいけないのさ。」


「手間を楽しむから趣味なんでしょうに……ゆとりがない人ですね。

 さて、そんなゴローさんでも楽しめそうなキャラクター案ができましたよ。

 箇所ごとに少しの別案と変更できますし、気に入ったら決定をタッチしてくれれば終わりです。 

 わからないことがあったらヘルプでも読んで解決してくださいね!それでは!」


そう言い残してして飛び去ったサピーが置いていったタブレットには、むげんわーるどでの俺の姿が映し出されていたのだった……。


『現在のゴロー』

ーーーーーーーーーーーーー

名前:ゴロー

種族:人族(ユニーク)

戦闘職:ギャザー (ジョブスキル : 1)

生産職:美食家 (ジョブスキル : 1)

ギフト:サピ子の祝福

HP:50

SP:30

ATK:5

DEF:8

INT:6

MTL:7

SPD:5

LUC:10

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