2. アンドロイドっぽい子がよかった
VR業界で日本を引っ張る大企業、SOUSHIN社の新型ダイバーであるHM-501F(なんと運良く初回抽選販売での入手なのだ!)のメニュー画面から、むげんわーるどのインストールを始める。
通信インフラが整い、記憶媒体の容量が増えていくに連れて現代人は調子に乗り、今ではVRアプリ容量の相場は3桁ギガ後半に差し掛かっている。
そんなもんだからよほど優れた環境でない限り、今も結局10分程度はダウンロードにかかってしまうのであるが、
親世代の環境なら半日は覚悟の容量だってのだから、きっと目覚ましい進歩なのだろう。
暇なうちにとフルダイブ操作とコントローラー操作を試していたら、バックグラウンドで進めていたインストールはいつの間にか完了していた。
フルダイブを解いたときの少し力が入りづらいふわふわした感じは独特で、これはたしかに苦手な人もいるだろうと思う。
しかしながら、それを上回る感動がフルダイブにはある。
テーマパークで初めてカプセル型を体験したときは、未来を感じてたまらなかったものだ。
(よし、むげんわーるどやるぞ〜! ポチッとな)
アイコンをタップするような感覚で体を動かす(実際はその脳波を読み取って処理されているだけだが)と、しっかりとした注意書きが表示される。
(長時間のフルダイブには注意が必要と。やりすぎると体に感覚が戻るまで時間がかかるんだな〜。)
そのため、むげんわーるどでは自分でタイマーを設定しなくてはならないらしい。
わかりやすい健康被害がほぼ確認されないギリギリの3時間が最長で、強制的にコントローラー操作に切り替わるんだとか。
(事前通知もあるとはいえ、こりゃ戦闘中の事故デスもあるな〜。気をつけておこう。)
視界が切り替わり、そして見えてきたのは青空に草原、剣と杖がモチーフの可愛らしくも王道なタイトルロゴに、BGMもアルペジオが目立つどこか懐かしいテーマだ。
(いかにもな組み合わせだな。まぁ俺は初めてだしな。こういうのでいいんだよ、こういうので。)
一通りタイトル画面を満喫した俺は、さっそくキャラクリを片付けることにした。
せっかくの新型ダイバーで新作VRMMOだが、創造性に乏しい俺はキャラクリとかは苦手なのだ。
恋愛シュミレーションとかもデフォルトの名前でやっちゃうタイプ。
(でもMMOじゃデフォってわけにもいかないからねぇ〜。おや?)
どうやらこのゲームには、キャラの作り方が3通りあるらしい。
まずは、ダイバーを通して脳波や骨格を読み取り、プレイに違和感がほぼ出ない範囲で作る「スキャン」。
フルダイブに慣れていない人や、現実により近い感覚でプレイしたい人におすすめらしい。
ほぼ何もしなくてもきれいにまとまるのは魅力的だが、現実を離れる楽しみを味わえないのはいまいちか、次だな。
2つ目が、種族を決めてから各パーツを選び、スライダーで調整まで可能な「フルビルド」。
これが俺のいちばん苦手なやつだ。どうやっても最初のモブよりしっくりするキャラクターに仕上がらないのである。
ズラッと並んだ種族表を見たら選ぶのも億劫になったので、これはナシ。
そして最後が、このゲームの一つの特徴としてまで挙げられるキャラクリエイトシステム。
決められた質問やAIとの対話によって、もっとも望むプレイスタイルに適したキャラクターを作る「サポートクリエイト」である。
(どう考えてもこれ一択じゃん。楽しめるのが一番だし。)
迷わずサポートクリエイトを選ぶ。
すると、上からふわふわと羽の生えた綿毛のような光の玉が降りてきた。
(んん? ゼ○ダの○ビィか?)
「よく言われますが、妖精ってもっと昔から光の玉なこと多いですよ〜」
「うわすぐ喋る」
「そこは『人の心を読むな』とかでしょ! わたしはサポートAIのサピーです。 あんまり酷いこと言うとまともなキャラあげませんからね!」
「んですごい自我」
「もう! 1点減点しますからね! 変な縛り付けてやるんだから!
わたしはAIですが、もう数万人キャラクターを作ってるんです。 意志っぽいものだって出てきますよ!」
「ごめん悪かったって。ところでサピーさんよ、どうやってキャラを作るんだい?」
「思ったより素直に誤りますね、いいでしょう。
まずは、このテンプレシートを埋めてもらえますか?」
そう言ってサピーが渡してきたのは、たくさんの質問が表示された大きくて軽いタブレット端末のようなものだった。
「あ、今めんどくさがりましたね!。だったら素直にスキャンすればいいんです!
あと、これはむりに全部埋めなくてもOKですから。もちろん全部埋めるよりはやや平均寄りのキャラにはなりますが!」
サピーの心読みが止まらないので、さっさと埋めてしまおう。
俺はこう見えてもこだわり人間だぞ、覚悟しろサピー!
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