雪に咲む

第3話 女性同士でもラブホに入れますか

　初めてのセックスはラブホテルで。そんな憧れは、男女のカップルでも同じかもしれない。

　十二月に入ってから、女性同士で入れるホテルを一緒に探した。

　空きコマの学生会館。おしゃべりに夢中になる学生達の中で、私と雪乃は大きな選択をしていた。お互い黙り込んだまま、雪乃のスマホを凝視する。

　雪乃がリストアップしたホテルは複数あった。

　安堵とともに迷いを感じた。今まで交際経験がない者同士、どのホテルがいいのか分からない。

　できれば、ほかのお客さんと鉢合わせしにくい場所がいい。大学の知り合いに見られると気まずくなりそうだ。初めてのホテル選びは、旅行の宿泊先を探すよりも難しかった。

　悩んだ末に選んだのは、異国情緒あふれる外観のバリスタイルホテル。

　女子会プランあり。部屋の写真も好印象。ダークブラウンを基調とした、落ち着きのある空間に見えた。

　実際にデートで行くと、ホテルは入りやすい雰囲気だった。私達は、未知の世界へ思い切って足を踏み入れた。

　さっきまで流川・薬研堀の歓楽街を堂々と進んでいた雪乃は、急にもじもじと手を握る。その様子を見て、私も恥ずかしくなってきた。すでに、見慣れないソープの看板で生命力は削られていた。なけなしの気力を振り絞り、雪乃の前を歩く。

　ここは、私がリードしなければ！

　はにかむ女子大生の二人組。絵面は可愛らしいかもしれないが、固まっていては埒が明かない。

　緊張しながらフロントに進み、宿泊でと伝える。

　従業員のお兄さんが気さくに対応してくれたおかげで、チェックインは滞りなく済んだ。

　受け取った鍵を握りしめ、エレベーターに向かおうとした。

「ねぇ。シャンプーとトリートメント、どれがいい？」

　振り返ると、雪乃は貸出シャンプーを見せた。ブランド名は聞いたことはあっても、使用したことはない高級シャンプー。ワンコインで済む詰め替えを選ぶ私に、価格以外のこだわりはない。美容好きの彼女に選択を委ねた。

「雪乃が決めていいよ」

「慧さんの髪質ならこっちかな」

　楽しそうに選ぶ様子に、私まで嬉しくなる。緊張が解けていて良かった。

　このときの私は知らない。ほんわかとした空気が部屋に入って消失することを。

　雪乃と私は、夜十時過ぎから朝五時まで愛し合った。

　賢者タイムの存在しないセックスは、時計を見なければ永遠に続くらしい。腕時計が壊れたのかと思い、文字盤を二度見した。

　慌てて湯船にお湯を貯め、互いの体を洗うのだった。