第8話 ピンクノイズ
寒くなってきた。もう11月だ。
部活が終わると日が短いからとっぷりと暗い。いつものように智世ちゃんとバス停で待ち合わせして一緒に下校する。智世ちゃんに言わせるとバスの本数が少ないから一緒になっているだけらしいが、剣道部よりも自由な美術部の彼女が俺と帰りが一緒になるということは合わせてくれていると思って間違いない。ツンデレは解釈を間違えると大変だ。
今年一番の冷え込みとか騒がれる今日、智世ちゃんはマフラーみたいなのをぐるぐると顔の周りに巻いている。ピンクとかチェックとか想像するかも知れないが、裏切ってのブラックだ。これがまた大人っぽくてなるほどと勝手に納得。しかし寒い。ウィンブレは忘れてきたし、俺のお気に入りのマフラーやお揃いの帽子もない。こんな時は便利さを追求した坊主頭を恨む。帰りのチャリ耐えられるだろうか。
「先輩、寒くないですか?私は気にしないので防寒対策して下さいね。」
なんだろう、今日は妙に優しく俺を
「今日はマフラーとか忘れちゃったんだ。大丈夫だよ。家近いし。」
耳キーンにはなるなぁとか思う。これはもしかしたら、私は車なんでって別れ際にマフラー貸してくれるみたいな前フリだろうかと勝手に盛り上がる。
「じゃあ私はこれで。暖かくしないと風邪ひきますからね。」
と念押ししながら、マフラーは貸してくれずに彼女は駐車場へといってしまった。ちょっとがっかりだが、仕方ない。彼女も寒いのだろう。
俺は彼女が消えた事を確認してから自転車を停め、荷物の中から学生服を引っ張り出した。今日の部活は道場が使えなくて外でジャージで素振りだった。そのまま帰ってきてしまったから上から学生服を羽織る。暖かい。下のズボンも履いてしまおうかと思ったが、最近きつくなったからいろいろと危ないのでやめておく。上が学生服、下がジャージという一番やってはいけないというあやしい格好にはなったが仕方ない。街灯が無ければ暗闇だ。防寒対策は必要だ。智世ちゃんもそう言ってたし。自転車に飛び乗った。
☆ ☆ ☆ 智世目線☆ ☆ ☆
姉が中学3年の頃、塾の目の前のスーパーの駐車場で母と待っていると姉と前後して出てくる特徴ある頭とメガネの男子、それが清水先輩だった。見ているだけでこの人幸せそうだなって思える人だった。何より寒い日は
とはいえ、付き合うつもりは全然無かったけど。
そして、姉の塾通いが終わってから見ることのなかった路上着替え&学生服ジャージのあやしいファッション、ピンク姿。これは寒くなったら見られるのでは待っていた。まだ必要に応じて躊躇なくするのか知りたかった。だからあえてマフラーは貸さない。寒さを強調して、さよならをしてから影に隠れて彼を見守る。
シター!!
これでいい。これでこそ清水先輩。
しかしうちの高校のジャージひどいなぁ。清水先輩赤いジャージに学生服は犯罪級にひどいファッションですよ!
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