第3話 メガネのネジ、呪いの釘を抜く
そんな最悪な初会話をかわして、より一層桜田姉妹に近寄りがたくなり電車をずらしたりバスをずらしたり。なんで俺がこんなに気をつかわきゃいけないんだ!あの妹はなんなんだ!桜田姉の方(俺の方で区別を付ける事にした)とのほんわかとした通学時間を返せ!と思う日々であった。
桜田姉の方は時々ビシッと言うけど、聞き上手でにこにこしてて、惚れていたクマ弟の森が優しくて可愛いくて気が利くといつも褒めてばかりいた事もあって俺もいい印象しかない。同じ姉妹でも背がデカくなるとあんな性格になってしまうのかねぇと悪態をつく俺であった。
6月は文化祭がある。クラスの催しものから部活の模擬店まで二箇所の準備に追われた。文化祭前日は遅くなり、新月の晩で空はかなり暗かった。
駅のホームでまた姉が一緒ではない桜田の妹を発見してしまった。背がデカいから無駄に目立つのだと思いながらチラチラと見ていると、彼女がおもむろにメガネを外した。そして慌ててしゃがみこんでメガネのレンズを通して地面で何やら捜している。その異様な光景につい、話しかけるなと呪いの釘を刺されていたにも関わらず
「どうしたの?桜田の妹。」
と声を掛けてしまった。
「近寄らないで!メガネのネジが外れた!今捜している!」
あーレンズが外れちゃう所のネジね。あれ小さいんだよね。なんて同じメガネ族の俺はお人好しにも同情して一緒に探す事にした。
そしてネジが彼女の靴ひもに乗っかってるのを見つけた。
「見ーっけ」
といって彼女の靴に手を伸ばしてネジをとるのと
「どこっ!」
と彼女が顔を上げるタイミングが悪かった。俺の
「イテェ」
「痛い!いやそれよりネジ!」
顔を挙げた彼女の素顔を顎をさすりながらまともにみてしまった。
美人だった。ぼうっと見とれた。切れ長でまつ毛が長い少しつり気味の目にすっと通った鼻に細長い顔。色白のせいか頬は赤い。と目の前に手が。
「ネジどこ!」
「ああー。靴にのっかってたんだ」
彼女の手の上にネジを置く。
「あー良かった。」
ホッとした顔で彼女はネジを受けとるとメガネにネジを入れて手でまわしはじめた。
「いや、それ無理でしょ。小さいドライバーないと」
「メガネないと歩けないし」
「メガネ屋さん行ったが良いでしょ。ネジ山壊してもなんだし」
「だから歩けないし」
「相当目悪いのな。いつからメガネなの?」
そう、美人なのは一瞬で目の悪い彼女はすごく目を細めて変な顔で俺をみる。
「小学校の就学時健診で引っかかって、一年生から。」
「あー筋金入りのメガネちゃんなのね。メガネ屋さんまで一緒に行ってやるよ。メガネのカタクリでしょ。」
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