第2話 初めての会話
桜田は通学に時間がかかるので高校では朝練の厳しい吹奏楽部に入るのは諦めていた。で、どっかの楽団に属して帰宅部にしたらしい。俺は中学からの続きで剣道部に入ったけど、武道館で同居している強豪柔道部の顔色を
桜田の妹が何か部活に入ったらしいと気づいたのは俺が遅い日に彼女が1人で帰るのを見かけるようになったからだ。何から何まで一緒ってわけではないんだなと思い、何部かふと興味が沸いた。
電車の待ち時間に近くに寄って声をかけた。
「桜田の妹さんって何部?」
ビクッとしてすごい勢いでこっちを振り向きまた顔をそらしてからボソっと彼女は呟いた。
「美術部です。」
「あー中学から?」
「中学は吹奏楽部。」
あーそこは姉妹一緒で高校からは別と。
「楽器はやっぱりフルート?」
頭の中で姉妹並んでのフルートを浮かべる。ないな〜見たことないな〜吹部の演奏何度かみたけど。
「なんでやっぱり?私はトランペットでした。」
「おー後ろの方でプーカプカの」
するとそっぽを向いて呟いての会話をしていた彼女がまたすごい勢いで振り向くと
「トランペットは吹部の花形ですから!お姉ちゃんの代なら松山先輩です!」
と桜田よりドスの聞いた声で返してきた。
「松山?誰それ」
「吹奏楽部の部長だったんですよ。知らないんですか?」
「いや〜知らない。」
本当に知らない。多分接点ない奴だったんだろうな〜と思ってたら、電車がきて、2人で乗る。なんとなくそのまま近くにいた。
「なんでついてくるんですか?」
またトゲのある声がする。なんだか桜田と違ってキツい奴だなぁーってこいつも桜田かと思って。前に名前を紹介された気もするけど、すっかり忘れたので、
「桜田の妹ってなんて名前?あっ俺は
と自己紹介しつつきいてみた。
「
「あー智世ちゃんね。漢字はどう書くの?」
そっか結構かわいい名前で。
「あの、気持ち悪いので名前呼びはやめて頂きたいんですけど。」
あっけにとられる。こんなはっきり気持ち悪いって。いや負けてはいられない。
「桜田さんだと被るでしょ。」
「姉の事は妹って呼んでませんでしたか?」
なんで知ってんの。とは思ったけど。
「最近、桜田妹になり縮めて桜田って呼んでんだ。向こうも兄ちゃん呼びやめたみたいだし、お互い高校生だし」
「高校生の下りはよく分かりませんが、じゃ、私は桜田の妹さんで、構いませんから。」
フフッと彼女が笑った。ずっとつんけんしてたから笑顔は不意打ちだった。
「いや、でも、それ、かなり紛らわしいっていうか使いこなす自信が無いっていうか。」
と結構かわいいなぁと思いながら抗議をとなえてみると、彼女は
「簡単です。私に話しかけなきゃいいんです。使わなければ問題ないです。」
バシッと言い切るとそっぽを向いたままそれきり口をつぐんだ。駅に着き彼女は
あっけにとられたこっちは降り損ねる所だった。
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