例え全身トゲを刺されてもサボテンの様に稀に花咲くツンデレの君が大好きだ

柴チョコ雅

第1話 妹と妹

 宣言しておく。俺は一目惚れ否定派だ。


 俺と森優弥もりゆうや桜田奈菜世さくらだななせの3人は中学の時、県クイズ大会に同じクマの着ぐるみを着て出場し優勝した事がある。そのままクマ兄弟妹きょうだいを名乗るようになり、森は別になったが、俺と桜田は同じ高校で、学校、駅、バスで一緒になるとよく話をした。付き合うなら桜田なのかなって思うこともなくはなかった。ただ森が桜田をいたく好きだったのを知っていたからなかなか難しくもあった。


 高二の春になって変化があった。

桜田が背がやたら高い同じ制服を着た女子と一緒に通学するようになったのだ。やっぱり女友達の方が良いのかと近寄るのを遠慮するようになったが、桜田があんまり中学の時に女子同士でつるんでいるのを見た事がなかったから不思議に思ってはいた。


 5月末、風雨のせいで電車が遅れて駅で1時間近く待たされていた時だ。スマホの電源も怪しくなってふと顔をあげると、桜田と目があった。すると桜田は明らかに嫌がって逃げようとしている例の友達を引っ張って俺の所にやってきたのだ。


さとる、久しぶり。最近あんまり会わなかったね。これ、私の妹なの。4月からおんなじ高校。中学の時みたとは思うけど」


 明らかに妹というイメージから程遠い背丈の、桜田からは頭一つ大きい女子を紹介された。しかも失礼な事にそっぽ向いてやがる。


「お前が弟妹いるのは聞いてたけど、でっかい妹いるのは知らんかった。」


俺が175cmだというのに頭の位置があんまりかわらない気がする。


「私より昔から大きくて。いま、169くらいかな?智世ともよっていうの。よろしくね。」


「お姉ちゃんがチビすぎるんでしょ。もういい?私あっちいる。」


挨拶もなしに逃げやがった。態度悪いデカいメガネ女だった。


「あれっ、智世?待って。智、ごめんね。智世、機嫌悪いのかな、ホント、ごめんね。」


慌てて謝りながら桜田は妹の後を追いかけた。


 なんだあれ。先輩に対しての態度もなってないだろ。俺が穏やかな人間だからいいようなものの、よろしくお願いします。とかないもんかね?しばらく見かけていた桜田のお友だちの正体は血が繋がっているとは思えないほどいろいろ似てない妹だった。

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