第31話 9-2
15時。
約束の時間ちょーどになり、俺は三人と一つのテーブルを囲んだ。
「ーーお父さんの死から一ヶ月が立ちました。やはり母も精神的に疲れていた様で、倒れました」
俺は彼らに話した。
「ーー入院しているのか?」
そう聞いてきたのは、藤田しげるだ。
「はい。それで俺一人になっちゃったので、どーしたらいいのか?わからなくなってしまっていて、相談出来る相手もいなかったので、皆さんの知恵をお借りできたら、と思って」
「ーー僕らに出来る事なら何でも言ってくれよ。大変な事になってるんだな」
そう言って、俺を励ますように俺の肩に手を乗せたのは、沢田昌平だ。
「ーー困った時はお互い様だ」
そう言って頷いているのが、山崎太郎。
彼らもなかなかいい人なのかも知れない。周囲の人が見ている分にはーー。
ただ俺は絶対に騙されない。
「ありがとーございます。いろいろと考えては見るんですが、、俺だけでは対処しきれない事の方が多いと思いますので、いろいろと教えて頂けると助かります」
「うむ。遠慮せずにいつでも電話くれれば、話を聞こう」
三人がそう言ってくれた。
「ありがとうございます。これからお願いします」
頭を深々と下げて、俺は先に店を出た。
三人はまだコーヒーを飲んでいく様だった。
「ーーどー思う?あいつ、、」
秀二が店を出てすぐに、口火を切ったのは藤田しげるだった。
「うむ。健吾の息子だからな、、油断はするなよ?」と、沢田昌平。
何も言わず黙って考え込んでいる山崎太郎。
「ーーほんとはアイツ、何にも分かってないのかも知れないな。まだ中学卒業したばかりだろ?」
山崎太郎がいうと、
「その可能性もあるなーー」
他の二人が同意を示す。
昨日、過労で倒れ眠っていた母の入院している病室に俺は歩いていった。
それほど離れていない距離だ。
徒歩でも数分でつけるはずだった。
街は夕暮れに染まり、商店街はライトアップされていく。
これから、この街にも夜が訪れる。
病院の透明なガラス戸を抜けると、待ち合い室がある。
まだ4時過ぎだと言うのに、もう誰も待ってはいなかった。
母の病室に向かう。
コンコンコン。
軽いノックをして室内に入ると、母が寝ているはずの病室の窓際に、別の人間が眠っていた。
ケータイを見てみる。
病院からの連絡が入っていた。
俺は急いで、ナースセンターに向かう。
「こんばんは。電話をもらってたみたいなんですが、原口恵の息子ですーー電話なんでした?」
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