第7話男女の友情

男と女の間に友情は存在するのかというテーマ。友情という強い絆のよなもので二人が結ばれている状態のとき、はたしてそれ以上求めずにいられるだろうか。

そもそも、婚姻状態で異性の友達を作ることは難しい。仲良く会話しているだけでも、不倫だなんだかんやと批判してくる人は多い。たかが紙切れ一枚出しただけなのに、友達を作るために交友関係を広げることが制限されるのはおかしなことだ。人は一人では生きていけない。誰かが誰かの支えになって生きる、社会性のある生き物。これは言い換えれば、一人の人にとって必要な支援は複数の人が施していくものであるということだ。ある人にとって、一人のひとから得られる支援は限られているし、一人が一人の要求する支援全てを請け負うことはできない。つまり、配偶者一人ではもう一方のパートナーに対しての全役割を担うことは不可能なのだ。よって、配偶者以外の異性からの助けを借りることは自然なことであり、それによってお互いが心豊かになれれば素晴らしいことだと思う。

では、どうして異性の友達でなければならないのかということを説いていかなければならない。もちろん、助けを借りる相手なら同性でもいい。だた、男女間には心理学的にも脳科学的にも大きな違いがあり、それは言うまでもなく考え方や感情の出し方など様々な要素に関係してくる。つまり、相談する相手が異性であるという時点で、既に得られるアドバイスの内容が同性とは違ってくるのだ。

よく考えてみてほしい。夫婦間のトラブルを妻がママ友に、夫が同僚の既婚男性に話したとて、根本的解決に至ることは少ない。お互いが同性からの目線でしか物事を見られていないからだ。所詮愚痴を言ってストレスが少し発散するくらいの効果しか得られないだろう。でも、ここで配偶者以外の異性から話を聞いてみたら、「あ、そんなふうに考えてたんだ」といった発見や驚きがあることがよくある。正にこの効果を狙って、既婚者同士が異性の友達をもって交流することは有意義であるといえるのではないだろうか。

ただ一つ注意したいのは、友情といっている以上、同性の友達と接するのと同レベルの範囲で異性の友達とも接しなければならないということだ。つまり、同性の友達とはしないことは異性の友達ともしないということだ。ここにも個人差はあるだろうが、同性の友達と腕を組んで歩いたり、口づけをしたりすることはない限り、異性の友達ともしないのがルールだ。このルールをひとたび払拭してしまえば、やはり多くの人が鋭い目を向けるダークな世界へと簡単に引き込まれてしまうと思う。

でも、こんな考えもあるらしいので少しルールを見直したいと思う。友情とはお互いを大切にする、思いやるという気持ちであり、その存在を尊重し、慰め、励ますための手段として肉体関係がそこに存在してもおかしくないという考えだ。いわば、友情を育み、良好な状態に維持するための不貞行為は許容されるのだ。この主張は理解できなくもないが、疑問は残る。では一体、友達と恋人(もしくは配偶者)の違いは何なのか。そのボーダーにあるものは何なのかということだ。ここに解答を出すとすれば、それは『継続性』らしい。一度関係を持った友達であっても、その後頻繁に関係を続けるのではなく、「私たち友達に戻れるよね?」の確認で再び友情関係に戻れるというのだ。何かにひどく傷ついたり、自己嫌悪に陥ったりしてしまったとき、先ほどの友情からくる慰めや労りの気持ちでそこまで発展してしまうこともあるだろう。特に配偶者とぶつかって、どうしようもないくらいにつらい気持ちになったとき、頭をなでて優しく抱き締められたりしてくれる相手がいたらどんなに救われるだろう。そんな状況の中なら、意図しなかった施しまで得てしまう人がいるかもしれない。ここにも、頭で考えること(理性)よりも先に気持ちである「慰めてくれて、優しくしてくれて嬉しい、ありがとう、感謝、感激」といったたくさんの思いが先行していってしまう原理が働いていると推測できる。それは、恋の魔力に近いものなのだろうか。それとも、それを口実にして人は本能のままに生きてしまうようにつくられているのだろうか。

そもそも友達を作るという作業自体が、既婚者には難しい。婚姻によって生じた変化(居住地移転、仕事の有無、家庭での役割など)で男も女も様々な制約をうける。よって、新たな友達作りが自然にできる環境にいないし、既存の友人とも疎遠になりがちだ。こういった物理的にも精神的にも新たに出会いを求め、友達をつくることが困難な状況では、人恋しくもなる。今交流のある友達の存在が大きくなる。大多数の中から、そのときそのときに必要な人を選択し、助けを借りることができれば幸いだ。対象が多ければ、自分の注意や気持ちも分散できる。でも、そうではない。つまり、既婚者は少ない中の一人に集中し、簡単に深いところまでいけてしまう状態なのだ。付き合いを集中させてしまった一人が異性だったら、それはとても危険な状態なのかもしれない。少なくとも全てのことに100%ありえないと断言することはできないことを私たちは頭のすみにおいて、異性の友達と付き合っていきたいものだ。

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