第5話恋愛の魔力

頭ではわかっていても体と心がついていかない。好きになってはいけないとか、この人は自分のタイプじゃないとか、冷静に考えれば避けるべき恋愛対象の相手であっても近づきたくなるときがある。これぞ『恋の魔力』とやらが関わっている問題だ。「恋は盲目」というのもこれに似ているかもしれない。

もともと本能的にもこの魔力は個人に備わっているらしい。この魔力がなければ出産、育児という、ものすごい試練を選択する者はいないからだ。つまり、人が恋に落ちるには頭だけ(論理的要素のみ)ではなく、本能からくる感情的要素も持ち合わせていないといけないのではないか、という仮説が立てられる。

私は結婚と出産を経験して、歳を重ねるにつれて、段々と頭でっかちになっていた。論理的思考ばかり使って、

「やっぱりこうでこうで、こういう要素が配偶者には必要だったのに、なぜあの人と結婚してしまったのか」

ということばかり考えていた。何で冷静に考えたら好ましくないタイプの人を好きになって、結婚まで行ってしまったのか。その延長上で、人はなぜ不倫なるものに足を踏み入れてしまうのかという疑問も持ち続けていた。

でも、少しその原因がわかってきた気がする。解決の糸はこの『恋の魔力』であり、エモーショナル(感情的)要素が既婚者の恋愛にも不可欠だということだ。

論理的にパートナーを選んだところで、いざ良い雰囲気になったとしてドキドキするするのか。いや、しない。今正にデメリットばっかりの夫と正反対の、頭で考える理想の条件に近い男性が現にちらほらいなくはないが、恋してるときのような特別な感覚がないからだ。私の場合、こういうところができて素晴らしいといった尊敬からくる好意はあるが、その人とこれから先どうにか深い関係になろうというところに至らないようだ。そこで考えたのは、本能からくる感情的要素の欠如が原因だということだ。いくら条件選定しても、手をつないだり、だきしめたりしたいかどうかの感情とはつながらない。本当に不思議だと思った。不思議だからこそ『魔力』という表現が最適なんだと思う。

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