#2

 結局、二人は結婚した。その知らせを初めて耳にしたとき、僕がどれだけ驚いたものか、きっと想像に容易い。そのとき、僕はすでに就職して三年目で、二人とはもうかなり前から連絡を取っていなかった。それでも僕はどうしても理解できなくて、かろうじて残っていた連絡先を引っ張り出して、彼と彼女のそれぞれに(もちろんそれぞれ相手には告げずに)尋ねてみた。

 「彼は物事の本質的本質をよく見抜いているわ」と彼女は言い、「彼女は生粋な現実主義者だ」と彼は言った。「もちろん、これは彼女の言葉を借りればということだけれど」と彼は付け加えた。

 謎は深まるばかりだ。二人の台詞についてあれこれ考えているうちに、僕は昔に受けた数学の授業のことを思い出した。背の低い数学教師は次のようなことを熱心に語った。

 「数直線の上では、右に行けば行くほど大きくなり、左に行けば行くほど小さくなるな。どんどん、どんどん、離れていっちまう。そして行き着く先は、プラス無限大とマイナス無限大だな。ところがだ。この二つをだな、よく聞けよ――、同じ無限大だと考えるとどうなるんだろう?」

 彼はそこで一息ついて、有頂天な表情で続けた。

 「無限大同士がつながって、そう、一つの輪っかになっちまうんだな!」

 世の中には理解できないことがたくさんある。むしろ、ほとんど至るところのことがらは理解できないのかもしれない。僕は当時から数学がちんぷんかんぷんだったし、今も二人の関係を振り返ってはため息をつくことしかできない。

 理解できないことは仕方がない。これは僕が大人になる過程で身につけた武器の一つだった。人権よりも遥かに実用的な武器だ。僕はプラス無限大とマイナス無限大がつながる世界を想像しながら、極北の彼と極南の彼女、あるいは極南の彼と極北の彼女のために友人代表スピーチの原稿を書いた。二人の末永い幸せを祈って。

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極北 白瀬天洋 @Norfolk

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