第10話階下へ向かうホムンクルスちゃん

「やりました!」

「ぷぅ? ぷぅぷぅ!」


 思わず喜びの声がもれる。

 私の左腕には半ばまで刺さった状態で三角錐のスキル・ピラミドゥが存在していた。


「スキル・ステータス、オープン」


 私は期待と不安を胸に、さっそくレベル三のスキル・ピラミドゥが与えてくれるスキルが何かを確認する。


「──噛拳、とかかれています。こうけん、でしょうか」

「ぷぅ?」

「私の知識には無いスキルです」

「ぷぅ~」


 ぷぅに話しかけるようにして、その点滅しているスキルを口にだす。

 スキルの特性なのか、自然とその使い方は理解出来る。問題は、手にした鉄パイプでの戦い方とあまり相性が良くない感じがすることだ。


 ──まあ、そのときは鉄パイプは、投てきしてしまいましょう。それと、残ったスキル・ラビッシュ二つは念のため残しておきましょう。またお腹がぎゅっとなったときに「砂礫喰い」のスキルが必要になるかもしれません。


「さて、ぷぅ。下の階へ行ってみようかと思います」

「ぷぅ」


 どうやら今度はぷぅからの警告も無い様子。

 私は鉄パイプの中央を左手で握るようにして持ち変えると、右手を空けた状態でゆっくりと方下り階段に足を踏み出した。


 ◆◇


「このフロアも、同じ構造です。それにやはり壊れたものばかりで、何もありません」

「ぷぅ」


 私とぷぅはすでに何フロアも下へと降りてきていた。

 ときおり、透明化したゴブリンと遭遇しては、ぷぅからの警告もあり無事に倒すことに成功していた。

 背負ったズタ袋には、かなりの数のスキル・ラビッシュが貯まっていた。


「しかし、レベル四のスキルが覚えられなかったのは残念です」

「ぷぅ~」


 思い出して呟いた愚痴に、ぷぅが慰めるような音を出してくれる。

 スキル・ラビッシュが六個たまったタイミングで、スキルの更なるレベルアップが出来ないかとインストールを試みてみたのだ。


 結果は見事に失敗。スキル・ピラミドゥごと私の左腕から弾かれるように飛び出してしまったのだ。


 当然、スキルが全く無い状態になってしまい、飛び出したスキル・ピラミドゥも粉々に砕けて消えてしまった。


 ──まあ、想定内です。そのために六個まで貯めていたのです。


 私は落胆しながらも、すぐに再びスキル・ラビッシュを三つ、順々にインストールし、再び噛拳のスキルを習得。

 それ以後、ゴブリンを倒して手にいれたスキル・ラビッシュをため続けているところだった。


 私はフロアの探索を終えると、再び階段へ戻り、下ろうと踏み出す。


「ぷぅっっ!」


 その時だった。

 ぷぅの小さくも鋭い声。


 それはこれまで、ぷぅから聞いたことの無いぐらい、強い警戒の響きを宿していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る