第42話 ルイの危機

 牧畜畜産は一番単純な、池が有りまばらに雑木が生える広大な草原、そこに野牛や山羊を集めて放牧して居るだけだ。

 元々野牛が多く生息していた所だったので、手間要らずの牧畜業だ。


 シロの報告、担当して居るミード村、ここは養蜂が盛んに行われていて、ギル皇帝に禁止させられて居た、ハチミツ酒生産を再開したとの事、視察しない訳に行かないと、リンの転移でミード村に行った。


 ハチミツ酒は、水で7倍程に薄め、10日放置で造るシンプルな物、試飲すると少し蜂蜜の甘味が残る、ゆるい酒だった。


「ルイ兄様!甘くて美味しい」

「リン?お酒だから、そんなにがぶ飲みしちゃダメだぞ」

「らいじょうぶ!!」


 ハチミツ酒を取り上げ、ハチミツティーに変えておいた。


 蜂蜜と水を1対3で長時間発酵させれば「強い酒になる」との事で、強い酒も造る様指示を出した。

 ミード村長の話で、ヤマシタ村では禁酒令前は、蜂蜜と山モモでモモ酒を造って居たとか。


 ヤマシタ村に跳んだ。

 モモ酒の再開を指示し、エール村の話を聞く。


 結果5村は全て、酒造の村だった。


 酒造で成り立っていた村が、酒造を禁止されれば、蜂蜜を出荷出来るミード村以外は、当然貧しくなる。

 酒造を解禁すれば、放って置いても勝手に豊かになって行くだろう。

 ギルのバカさ加減には呆れた。




「僕なんて、遠くが見えるだけだよ、エミルちゃんは凄い!羨ましいよ」


 大王都に帰ると、レムとエミルが笑顔で話してる。

 エミルのオドオドした感じが、最近無くなったのはレムのお陰の様だ。


 エミルは、あれから力の暴走は無いが、肝心な時に力を使えるのか、ちょっと心配だ。



 仙人王国の復興事業の目処は立った。

 夕食後、リンにレム、エミルと今後の方針を話し就寝した。

 今日も目一杯忙しかった。

 ジンの補助は有っても、か弱い女の俺にはかなり負担で、過労気味なんだろう、ベッドに入ると直ぐに意識を手放した。


⦅この眠り方は···おか···しい······⦆

『······ル···ルイ···』


 必死の呼び掛けに、ルイは全く反応しない、2体の危険な影が近付いて居る!!

『ルイ!!起きてくれ!!ルイ!!』

 頼む!!ルイ!起きてくれ!!危険が迫ってる!!!

『ルイ!!寝言でも良い!5と言え!!ルイィ!!!』

『5、5、5、5!!5と言え!!』

⦅ジ···ン···うる···さい···5?⦆

『ヤッタァ!!5と言った収納!!!』


 2体の影が、ルイの首をカキ斬ろうとした瞬間、突如虚空に消えた。

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