第二十三夜「受け継がれる技術」

 イーグル達が生きる時代の技術は一発で完璧な成果を上げることを求められる。それに失敗した物は一生を失敗者の烙印を押されて過ごす事に成る。ある意味、非情な時代でもある。しかし、それが故に一番早い宇宙船や軌道エレベーターステーション等の物が安定して稼働している。

 イーグル達もその技術の恩恵を受けて居る事が多い。宇宙服の発達もそうだ。前世代では、とてつもなくごつい形の物が多かったが、今は素材も最新の化学繊維等が使われて薄く、軽い物に成っている。

 イーグルはその様な技術の恩恵を受けて今日も宇宙探査を行っている。そして、前世代とそっくりな人種が住む星の住人とコンタクトする事が出来た。

「失敗するか成功するか、やってみないと分からないって?」

 イーグルは少し驚いて彼の話を聞いた。失敗は何も残さないではないか、それが許されるという言葉に納得が出来なかったからだ。

「そうじゃよ。失敗か成功かはやってみないと分からん。そして、その評価も直ぐに出る訳では無い、長い時間を掛けて、それが人々の間に定着する事が出来れば、そこで成功と言えるんではないかね」

 彼はその星の科学者らしい。そして様々な発明を成功させた人物らしい事が分かった。

「勿論、一回で成功するは科学者や技術者冥利ぎじゅつしゃみょうりに尽きるというもんじゃろう。しかし、若いの……」

 しかしイーグルはそれに疑問を持った。

「でも、一回で使える物が出来ないと研究したり改善したりする意味が無いのでは?」

「だからじゃ若いの。目標は成功じゃ。全てうまく行く物を作ったり考えたりするのが我々の仕事じゃ。勿論、切られた期限も有るじゃろうから、それまでに何とかしないといけないが、それで失敗していたとしても、そこまでの道乗りは評価に値するものでは無いのかね、血反吐を吐くような努力をしたならそれはそれでよいとは思わないかね?」

「でも、それが失敗したんじゃ意味は無いのではと思いますが。だって、役に立たないんでしょう?」

「良いか、失敗も道の一つじゃ。それを行ってはいけないという成果に成るのでは無いかね?別な道を模索する指標になるではないか」

「それは確かに選択肢は一つ消えるわけですので、そういう意味では成功なのかも知れません。だから意味の無い事では無いのかも知れませんが、やはりそれは……」

「その通りじゃ、一回で終点に到達するには失敗を何度も重ねた実績が必要なのじゃよ。おまえさんも沢山失敗すれば良い。失敗無くして成長無し、成功ばかりでは道を見誤る、誤りからの方が成功への鍵を見つけられる確率は増えるんじゃよ」

「そう、かも知れませんね。でも……」

「納得できんようじゃな。それはお前さん若い証拠じゃ、心が熱い証拠じゃよ」

「心が熱い証拠?」

「しかしそれは暴走への鍵にもなる、正論が全てではない、少し斜めから見るのも理屈じゃよ」

「そう、ですね。はい、なんだか少し気が楽になったように感じます」

「お前さんの将来はまだ長い、焦る必要はないからのう。では、また話せるように期待しておる」

 イーグルはその科学者の言葉を聞いて正直に心が軽くなるのを感じた。このコンタクトには意味が有ったとを実感し、彼に感謝した。

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