第二十二夜「祭の日」

 そこは、星を上げての祭りの最中まなか


 踊り、歌い、そして祝い。歓喜、激しいリズム、それがイーグルにびりびりと伝わってくる。祭りの紀元は、あまりに古すぎてもはや覚えて居る者も記録も残ってはいいない。しかし、その星の人間達は、その祭に全ての精力をつぎ込んでいる。命の祭り、燃え盛る心。

 イーグルはその中の一人とコンタクトした。

「祭りの紀元?そんな物古すぎて誰もおぼえちゃいないよ」

「でも、この祭の形態から何か予想は付かなないのかい?」

「ははは、全然思いつかないよ。でも、今、僕等は楽しんでいるそれだけで良いじゃ無いか。何か問題でも有るのかい?」

「……いや、何も無いよ。君達は今、楽しいんだね?」

「ああ、最高さ、素晴らしい、嬉しいよ。君も楽しんで行ってくれよ、旅人なのかい?」

「ん、ああ、そんなものだ」

「あちこち彷徨さまよってないでここで暮らしなよ、ここは楽園だ」

「楽園?」

「そうさ、何も心配することも考えることも必要ない。全てが自由だ」

「なるほど、でも、僕は行かなければいけない」

「そうか、じゃぁ達者でな」

 イーグルは歓喜の中、人々のエネルギーが極限に達している事を感じながら交信を終了した。 通信の後、イーグルはステーションの中に戻り、今交信した星の資料が無いか資料室サンプルルームで調べて見た。そして、かなり時間が必要だったがその星の歴史を見つける事が出来た。それは三世紀程前にこの星と交信したレーダースの記録だった。

 それによれば、そこに惑星が有るが、生命の痕跡は見当たらなかったと有った。だが、今、イーグルはかれらと交信した。ちゃんと意思を持つ生き物が其処には居た。イーグルは、一瞬理解出来なかったが直ぐに何故そんなことが起こったか察する事が出来た。つまりこの惑星の軌道だ。

 この惑星は極端な楕円軌道を描いて太陽の周りをまわっている。その為に何世紀間は確実に氷河期が訪れるのだ。イーグルは、ここで、この祭りの意味が少し理解出来た様な気がした。これは、氷河期に入る前、彼等生命の最後の歌、そしてこの厳しい時代を乗り切って再び新しい命を育んで行こうと言う意志の表れの祭りでは無いのか。

 だから、彼等は心の底からこれを楽しむ。ひょっとしたら次の厳しい時代に命を落とすかも知れない。これは自分へのエールでも有ると同時に他の者達へのエールでも有る祭りなのだ。

「命がけの、祭り……か。いや、これから訪れる厳しい時代への決意か…。」

 イーグルは思った。全員が無事に厳しい時代を生き延びる事を。そして、再び命の祭りに酔いしれる時が来ることを、燃える命が再び明るさを取り戻すことを。

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