■閑話休題2「チーム」

 彼女に合うのは久し振りだった。輝く様な銀色の髪の毛と、薄く紅い唇と大きなグレーの瞳が印象的で背も高くタイルも良い彼女はイーグルと同じレーダースの一人。彼女の名は「ミール」。その昔、宇宙を探査する目的で打ち上げられた、初歩的で小規模な宇宙ステーションの名から、そう名付けられた。彼女と合ったところが自分の上司のオフィスだった事が少し不運に感じられた。


「イーグル、来たか。」

「はい。」


 イーグルはその上司に呼び出されていた。雰囲気から察するに、彼女も呼び出された一人らしい。

「さて、二人揃った処で仕事の話だが、今度、もう何人かレーダースを集めて共同の探査作業を行う計画を進行中なのだそうだ。」

 その上司の区長から察して彼も、それ程詳しく計画の全容を聞いて居ない様だ。取りあえず人員だけを確保するのが目的で呼び出しを掛けたらしい。

「要するに、レーダースによる探査作業の成果が余り芳しくないのでね。いや、君達を攻めている訳では無い、それほどこの仕事が難しく、かつ重要なものだという事だ。」

 その話を聞いた彼女は、ゆっくりと口を開いた。

「何人位、集まる予定なんですか?」

「いまの処の計画では10人以上のチームで進める予定らしいが、計画実行までに、このステーションに全員を集められるかどうか、微妙な所だ。決まり次第連絡するが、それまで、こういう計画が有る事を知っておいてほしい。」

「自分の探査能力が最大になる様に準備しておけという事ですね?」

「そういう事だ、イーグルもな。」

「分かりました。全力を尽くします。」

 レーダースが二桁の人数で集まるのは異例の事だった。何時もは一人で宇宙に意思を飛ばし続ける彼等にとって複数での作業には、事前の話し合いも必要だろうし、個々の能力も最大になる様に体調も整えておく必要が有る。

「以上だ、解散して宜しい。」

 ミールとイーグルは上司のオフィスを無言で退出した。

「宜しく…と、言いたいけど、レーダースはあくまで個人プレイが基本。皆と意思が同期出来るかどうかはやってみないと分からない。イーグルも理解してるでしょ?」

 イーグルは首を小さく縦に振りそれを肯定する。しかし、仲間が集まる事には少し気分が高揚するのを感じた。人嫌いの筈なのに、この矛盾は何なのか自分に疑問を投げてみたが、こと絵を見出すことは出来なかった。

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