第二夜「緑の蝶」

 イーグルは何時もの様に真空と無重力に身を浸していた。

 彼のイメージに同調する意識が見つかった。やや切れ長の目。瞳の殆どは黒く宇宙の漆黒を思わせた。額からは2本の蝶を思わせる触角。それに併せた様な一対の羽。女性と思われるプロポーションは鮮やかなエメラルドグリーン。そして頭上には大きな百合を思わせる花。

 彼女はその茎にもたれ掛る様にしてイーグルの意識に答えた。

 かつては彼女の文明も宇宙を目指し挫折して、その星の自然と共に暮らす事を選択したそうだ。

 彼女の星には政府など存在しない。あえて言うならば自然の意思が政府に代わる物と言って良いだろう。

 蝶の様な姿の女性はイーグルに答えた

「あなたの星に希望は無いの…?」

 イーグルは答える。

「そんな事は無いさ」

「でも、宇宙に出られないのでしょう。ならば、私達見たいに、徹底的に自分の星を愛してみたらどうなの?」

「僕は自分の星を愛しているよ。」

「嘘、ならば、あなたはなぜ自分の星から出たがっているの?」

「……自分の星の文化を宇宙に広めたいからさ。」

「それは、他の星の文明を否定しているの?」

「否定などしないさ。僕は自分の星が好きなだけだ。」

「……」

 彼女のの星の空も青空だった。おそらく酸素が多い星なのだろう。女性はイーグルに向って自分の羽を広げて見せた。エメラルドの輝きに似た深い色の羽だった。

 彼女はイーグルを見詰めると無表情に何かを思っている様だった。イーグルはその表情に心を締め付けられた。

「あなたと意識が同期したからどうという訳でもないわ」

 彼女はイーグルを少し寂しそうに見つめると羽を広げ飛び去った。

 イーグルは思う。この星を探査するには時間が遅すぎた。自分達地球人を見て居る様な気がして胸が締め付けられた。

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