もう私、好きなようにさせていただきますね？ 〜言いたい事を全部言って、スッキリ爽快自由になります！〜

第4話 殿下がお呼び、らしいです。

　例のゲリライベントから、１週間後。

　学校が再開して5日が経ったが、噂は今や少し混沌とし始めている。

　自分の能力を鼻にかけていたヤツだから、殿下に愛想を尽かされるのは当然だ、とか。

　逆にすぐさま婚約破棄を受け入れたのは、能力的に残念だった殿下にエリザベートが愛想を尽かしたからだ、とか。

　殿下とリズリーの愛の勝利だ、とか。

　中には明らかに殿下かその周りが流したのだろうバカバカしいものもある。

　しかしまぁ簡単に言えば、殿下派と私派で大きく二分されていると言っていい。

　私個人の実感としては、仲良くしている令嬢達から心配の声がかけられたり、そうでもない令嬢達からは心配を笠にきた取材が為されたり。

　殿下やリズリーの周りからは「ざまぁ見ろ」と言わんばかりの嘲笑が向けられたりとそれなりに色々あったが、どれも上手く流して対応。

　まさかこんなにも王族教育で会得した『あげ足を取られない流しスキル』が助けてくれるとは因果なものだ。

　が、自分が今まで努力して身につけたスキルも得た人脈も、決して無駄にはならないのだと分かった事は嬉しかった。

　たとえ婚約破棄が傷となり今後結婚話が来ないとしても、私は私らしくあれば良い。

　未来の国母という立場を捨てた私は、そう思えるようになった。

　今までに得たスキルは自分がやりたい事を実現するために使おうと考えられるようにもなった。

　そんな風に人生に対して前向きな気持ちになれたのは、誰でもない婚約破棄を申し出てくれた殿下のお陰に他ならない。

　今後は陰から二人の恋を密かに応援させてもらおう。

　間違っても、もう一度未来の国母なんて地位が私の所に転がってこないように。

　まぁ面倒なので、表立って指示したり助けたりは絶対にしないけど。

　そう思った時である。

「エリザベート嬢」

「何でしょう」

「殿下がお呼びだ」

　友人と楽しく歓談していた所にやってきたのは、殿下の取り巻きの一人・現在の宰相家の第三子息だ。

「私ですか？」

　今更私に何の用なのか。

　周りがザワリと揺れる中私が小首を傾げれば、彼は不機嫌そうな声で「そうだと言ってる」と言ってくる。

　どう見ても、こちらに礼儀を払う気が無いその姿は私の立場がたとえ『殿下の婚約者』では無くなった事に起因していたとしても、かなり無礼だ。

　が、もう色々と面倒なので、穏便に済ませるべくここは私が大人になる。

「では皆さん、私は少し行ってきますね」

「エリザベート様……」

「大丈夫です。私には、後ろめたい事など何一つありませんから」

　心配に顔を曇らせた友人に笑顔でそう言い、私は彼について行ったのだった。