ルールのクサリ
シヨゥ
第1話
我慢に我慢を重ねる日々は長く辛いもの。自分を律し、節度を持った態度で臨み生き続ける。そうすることで調和が生まれ、すべてが整っていく。
「でも、そんな息苦しい生活していて楽しいの?」
そんな私に問いかけてくるのは幼馴染。彼女は僕と正反対に自堕落な生き方を貫いている。寝たい時に寝、食べたいときに食べる。
「楽しくはない。ただ人生を健康なまま終わらせるために努力しているだけだ」
「そんな生活をしてたら心が参って病気になっちゃうよ」
「それはお前だからだろう」
「そんなことないよ。自分をルールで縛っているとだんだんとそのルールが増えていくんだよ。そうすると行動がどんどん制限されていってストレスになる。君もちょっとは感じるところあるんじゃない?」
「ないとは言わないが、まだ平気だ」
「まだって言葉を使っている時点で危ういよ。それはいつか限界が来るって分かっているから使う言葉だよ」
「それでも僕は――」
「力を抜こうよ」
反論としようとした言葉を封じられた。幼馴染の人差し指が唇に当たっている。
「食欲に負けることで生きられる明日があるかもしれない。睡眠欲に負けることで生きられる明日があるかもしれない。欲に負けることは悪いことじゃないんだぞ」
そう言って彼女は微笑む。それは自堕落への勧誘だ。張っていた心が音を立ててきしむのが聞こえたような気がする。それでも僕は、
「悪いことじゃないかもしれないが見栄えが悪い」
屈しない。
「強情だな~」
「強情で結構」
「じゃあ限界が来たときにまたお誘いするよ。自堕落はいいぞ~」
彼女はごろんと寝転がるとすぐに寝息を立て始めた。その横で僕も横になりたい。そんな気持ちをぐっとこらえて立ち上がる。自分を律し、節度ある態度で臨み生き続ける。それが自分に課したルールだからだ。
ルールのクサリ シヨゥ @Shiyoxu
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