第33話 魔導具1
社長と古物商の二人を帰して、日が暮れるまで待った。
麗華さんが来てくれたので食事をしながら、雑談だ。
麗華さんは、経済学部なのだそうだけど、趣味でピアノを練習しているとのこと。
そして大学の文化祭で演奏を披露しているんだそうだ。頼まれているらしい。
少し先になるけど、結構大きなコンクールにも出るらしい。
それと、やっぱりだがモデルの仕事をしていた。
読者モデルというものらしいけど、僕は良くは知らない。今度雑誌でも買ってみるか?
「やはりと言うか、モデルの仕事もしていたのですね……」
「やはりというのは? モデル会社に登録しているだけです。会社の宣伝になると言われたので……。
去年の文化祭で誘われるままミスコンに参加して、優勝してしまいました。それで、スカウトされて……。
それに仕事と言っても、月に一度、ファッション誌の片隅に乗るくらいですよ?」
専念すれば、トップモデルにもなれるんじゃないのかな?
でも、学業とピアノもあるのだろうし、そう単純にはいかないのかもしれないな。将来的には会社のことも考えているんだろう。
今日はそんな話をして、晩ご飯を頂いた。
◇
日が暮れてから、誰にも見られていないことを確認して、ログハウスに移動する。見られていても問題ないらしいけど。
ログハウスの宝物庫を開ける。
今日は、装飾品を見て行く。
『装飾品ですが、冠・ネックレス・イヤリング・指輪などがあります。元の世界でも使えますが、お勧めしません』
一つ取ってみと、サクラさんが説明してくれた。
・鳳凰の腕輪……状態異常無効。肉体が死亡しても、一定時間は魂を繋ぎとめる。体力+100%
体力+100%? こんな物が必要だったの?
効果が高すぎる。違う違う。今欲しいのはこんな物じゃない。
他の物を取ってみる。
・銀の認識票……自分を見つめ直し、集中力を上げる。集中力+5%
この辺りかな?
祖母の初期作品、もしくは、失敗作が置いてある場所を見つけた。他の装飾品とは、置かれ方が異なり、少し雑なので当たりをつけた。
目的になりそうな物を探して行く。
・壮健の指輪……肉体の成長を助ける。筋力増強の効果。体力+10%
・湧水の指輪……精神を安定させる。内包されている湧水を使い切ると効果が無くなる。知力+5%
・退病の指輪……病気を寄せ付けない。だだし、以前から患っている場合は、効果が出ない。防御力+10%
う~ん。微妙……。なんか違う。
「佑真さんの病気の進行を止めるようなものはありますか?」
『病気の進行を止めるだけであれば、薬草を煎じて飲ませれば良いですね。
また、エリクサーであれば、完治させることが出来ます。
薬丹は、効果が高すぎますね。部位欠損まで治してしまいます。
でも、良いのですか? 成分を調べられると大問題が起きてしまいますよ?』
そうか、祖母は薬草を配っていたんだな。
それだけでも、街の人達は感謝したんだろう。
「薬草もオーバーテクノロジーなのですよね?」
『もちろんです。魔力が含まれていますからね』
……。佑真さんにだけ飲ませる方法を考えた方が早いかな?
装飾品であれば、騒ぎも起きないと思ったけど、丁度良い物がないし。
いや、待てよ。
「僕でも装飾品を作ることは可能ですか?」
『う~ん。出来ますが、優未さんの優秀な装備が揃っているので、時間の無駄だと思ってしまいますね』
今は、余り時間が取れない。
サイオン製作との繋がりを断ってしまっては、意味がない。
僕の自己満足かもしれないけど、社長さんと古物商さんは、薬草を欲している。そして、渡してあげたいけど、現代では大問題が起きてしまうな。八方塞がりだ。
その日は、装備を整えて、魔物狩りに出ることにした。
少し遠出になってしまったけど、ゴブリンの群れを見つけることが出来た。ゴブリンは僕を視認すると攻撃して来た。
僕もゴブリンを見ただけで、不快に感じだ。生理的に受け付けない感じだ。
特に苦戦することもなく、殲滅を行う。
レベルも上がらなかったので、雑魚だったみたいだ。
朝日が昇る前に、帰路に着く。
なんというか、集中出来ていない感じがする。
◇
夜が明けた。
ストアより、短期間睡眠薬を購入して、僕はログハウスで仮眠を取った。
一応、スマホで寝る前の時間を確認する。
そして、意識を静めた。
……ふぅ。
目が覚めた。かなり熟睡した感じだ。頭がスッキリしている。
スマホを見ると、三十分程度しか経っていなかった。
「……これは便利だな。普通に寝るよりも効果がありそうだ」
『依存性はありませんが、使い続けるのはお勧めしません。体内時計が狂ってしまいますよ?
緊急事態の時のみ使用することをお勧めします』
まあ、それはそうか。
試しに使ってみたかっただけだ。他の薬品も確認しておきたい。
悪い物はないと思うけど、効果がありすぎて、使った後に騒ぎになるのは避けたい。
少しずつ試して行こうと思っている。
それよりも、今日の目的を果たしてしまおう。
僕は、城塞都市ダルクに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます