第33話 魔導具1

 社長と古物商の二人を帰して、日が暮れるまで待った。

 麗華さんが来てくれたので食事をしながら、雑談だ。

 麗華さんは、経済学部なのだそうだけど、趣味でピアノを練習しているとのこと。

 そして大学の文化祭で演奏を披露しているんだそうだ。頼まれているらしい。

 少し先になるけど、結構大きなコンクールにも出るらしい。


 それと、やっぱりだがモデルの仕事をしていた。

 読者モデルというものらしいけど、僕は良くは知らない。今度雑誌でも買ってみるか?


「やはりと言うか、モデルの仕事もしていたのですね……」


「やはりというのは? モデル会社に登録しているだけです。会社の宣伝になると言われたので……。

 去年の文化祭で誘われるままミスコンに参加して、優勝してしまいました。それで、スカウトされて……。

 それに仕事と言っても、月に一度、ファッション誌の片隅に乗るくらいですよ?」


 専念すれば、トップモデルにもなれるんじゃないのかな?

 でも、学業とピアノもあるのだろうし、そう単純にはいかないのかもしれないな。将来的には会社のことも考えているんだろう。

 今日はそんな話をして、晩ご飯を頂いた。





 日が暮れてから、誰にも見られていないことを確認して、ログハウスに移動する。見られていても問題ないらしいけど。

 ログハウスの宝物庫を開ける。

 今日は、装飾品を見て行く。


『装飾品ですが、冠・ネックレス・イヤリング・指輪などがあります。元の世界でも使えますが、お勧めしません』


 一つ取ってみと、サクラさんが説明してくれた。


 ・鳳凰の腕輪……状態異常無効。肉体が死亡しても、一定時間は魂を繋ぎとめる。体力+100%


 体力+100%? こんな物が必要だったの?

 効果が高すぎる。違う違う。今欲しいのはこんな物じゃない。

 他の物を取ってみる。


 ・銀の認識票……自分を見つめ直し、集中力を上げる。集中力+5%


 この辺りかな?

 祖母の初期作品、もしくは、失敗作が置いてある場所を見つけた。他の装飾品とは、置かれ方が異なり、少し雑なので当たりをつけた。

 目的になりそうな物を探して行く。

 

 ・壮健の指輪……肉体の成長を助ける。筋力増強の効果。体力+10%

 ・湧水の指輪……精神を安定させる。内包されている湧水を使い切ると効果が無くなる。知力+5%

 ・退病の指輪……病気を寄せ付けない。だだし、以前から患っている場合は、効果が出ない。防御力+10%


 う~ん。微妙……。なんか違う。


「佑真さんの病気の進行を止めるようなものはありますか?」


『病気の進行を止めるだけであれば、薬草を煎じて飲ませれば良いですね。

 また、エリクサーであれば、完治させることが出来ます。

 薬丹は、効果が高すぎますね。部位欠損まで治してしまいます。

 でも、良いのですか? 成分を調べられると大問題が起きてしまいますよ?』


 そうか、祖母は薬草を配っていたんだな。

 それだけでも、街の人達は感謝したんだろう。


「薬草もオーバーテクノロジーなのですよね?」


『もちろんです。魔力が含まれていますからね』


 ……。佑真さんにだけ飲ませる方法を考えた方が早いかな?

 装飾品であれば、騒ぎも起きないと思ったけど、丁度良い物がないし。

 いや、待てよ。


「僕でも装飾品を作ることは可能ですか?」


『う~ん。出来ますが、優未さんの優秀な装備が揃っているので、時間の無駄だと思ってしまいますね』


 今は、余り時間が取れない。

 サイオン製作との繋がりを断ってしまっては、意味がない。

 僕の自己満足かもしれないけど、社長さんと古物商さんは、薬草を欲している。そして、渡してあげたいけど、現代では大問題が起きてしまうな。八方塞がりだ。


 その日は、装備を整えて、魔物狩りに出ることにした。

 少し遠出になってしまったけど、ゴブリンの群れを見つけることが出来た。ゴブリンは僕を視認すると攻撃して来た。

 僕もゴブリンを見ただけで、不快に感じだ。生理的に受け付けない感じだ。

 特に苦戦することもなく、殲滅を行う。

 レベルも上がらなかったので、雑魚だったみたいだ。

 朝日が昇る前に、帰路に着く。

 なんというか、集中出来ていない感じがする。





 夜が明けた。

 ストアより、短期間睡眠薬を購入して、僕はログハウスで仮眠を取った。

 一応、スマホで寝る前の時間を確認する。

 そして、意識を静めた。


 ……ふぅ。

 目が覚めた。かなり熟睡した感じだ。頭がスッキリしている。

 スマホを見ると、三十分程度しか経っていなかった。


「……これは便利だな。普通に寝るよりも効果がありそうだ」


『依存性はありませんが、使い続けるのはお勧めしません。体内時計が狂ってしまいますよ?

 緊急事態の時のみ使用することをお勧めします』


 まあ、それはそうか。

 試しに使ってみたかっただけだ。他の薬品も確認しておきたい。

 悪い物はないと思うけど、効果がありすぎて、使った後に騒ぎになるのは避けたい。

 少しずつ試して行こうと思っている。


 それよりも、今日の目的を果たしてしまおう。

 僕は、城塞都市ダルクに向かった。

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