第27話 城塞都市ダルク4
〈風火輪〉で空を飛ぶ。
飛行能力も、ただ飛べると言うだけだ。急激な方向転換などは出来ない。
これも改善して行こうと思う。
ここで、ふと思う。ステータスでセンスを上げれば、改善出来るのかな?
練習の必要はない?
……検証も必要かな。
上空より、大森林を見下ろす。
本来であれば、未踏の地……。祖母とその先生は、なんで大森林の真ん中にログハウスなど建てたのかな。ずっと疑問に思っている。
祖母は、英雄として街中でも暮らせたはずなのだけど……。
でも、答えは誰も分からないだろうな。
もしかするとだけど、祖母の先生の手記が残っているのであれば、分かるかもしれない。
僕は、〈称号:解読師〉を持っているのだから。
今度ログハウスを探してみるのも良いと思う。
それと、別なアイディアが思いついた。
「モニカさんに頼んで、ダルクにある古い書物を見せて貰うのも良いかもしれないな……。歴史書は、書いた人の主観が多分に混ざる。日記とかが良いかもしれない」
独り言が出た。
そのまま飛び続けて、ダルクの街に向かった。
◇
城塞都市ダルクに着いた。
城壁を修理している……。僕が壊したとは言っていないので誰も知らない。
でも、罪悪感を感じるな……。
少しぐらいは手伝うか?
僕は、工事現場に降り立った。
「こんにちは。大変そうですね? 手伝いましょうか?」
皆唖然としている。
だけど、現場監督者みたいな人が駆け寄って来た。
「英雄の孫のユーリさんですね。今日はどうされました?」
「経過観察に来たくらいです。土壌の改善を行った後の生育具合くらいは、確認しようかなと。
でも、城壁の修理現場を見かけたので、瓦礫の撤去ぐらいは手伝えそうかなと思い、声を掛けました」
「こちらは人手は足りています。それよりもモニカ嬢のところに行って貰ってもよろしいでしょうか?
少し問題が起きていまして……」
問題? なにかあったのかな?
『サクラさん。知っています?』
『すぐに分かりますよ。ここは良いので、モニカさんに会いに行きましょう』
「分かりました。モニカさんの居場所は分かりますか?」
「神樹に近い高い建物にいます。警備兵もいますが、ユーリさんが来た場合は通すように言ってあるので、そのまま向かってください」
「分かりました。皆さんは壁の修理を頑張ってください」
こうして、その場を後にした。
◇
「あれかな?」
神樹の根元に大きな建物があった、時計台まである。
高い建物と言われたので、間違いないだろう。
柵で囲われているので、門の前で降り立った。
「こんにちは、僕は優莉と言います、モニカさんに会いに来ました」
「こ、こんにちは。ユーリ様。お話は聞いております。どうぞお進みください!」
警備兵の人達は、一列に並んで敬礼して通してくれた。なんだろう?
そのまま進む。
建物の中は、大勢の人が働いていた。
この中から、モニカさんを探すのか……。面倒だな。
『サクラさん。モニカさんは何処か分かりますか?』
『今は会議中ですね。しばらく待った方が良いでしょう』
すぐには会えそうにないか。う~ん、適当に時間を潰すか……。もしくは、別の所に行くか……。
まだ、ダルクの街は詳しくないんだよな。
『サクラさん。図書館とか何処かにありませんか?』
『ダルクの街にはないですね、王都まで行けば、古文書とかがあります。だだし、借りれませんけど』
『それでは、古本屋はどうでしょうか?』
『あるにはありますが、お勧めしません。優莉さんは日が暮れるまで立ち読みする未来しか見えませんから。それでも良いのであれば、お教えします』
……うん。止めておこう。
それと、王都の古文書か……。覚えておこう。祖母の先生のことが分かるかもしれない。
でも、そうするとすることがないな。少し考えて、共有スペースのソファーに腰かけた。
そして、人の流れを観察する。でも、やっぱり見られているな。視線が痛い。
ここでスキル〈気配遮断〉を発動する。
数秒後、誰も僕を気にしなくなった。金霞冠でも良かったけど、せっかくなので、新スキルを使ってみた。ポイント消費なしで、生えて来たスキルだ。僕に合っているんだろう。
『対人恐怖症は、収まって来ましたか?』
突然のサクラさんからの質問だった。
『仮面を着けていると、少し和らぎますね、顔を隠すと良いのかな? 戻ったら、マスクでもしてみますか』
『それよりも、オシャレしましょうよ。自信も付くし、症状も和らぎます』
そんなものなのかな? 隠すよりも、オシャレか……。
ログハウスには、装飾品も多くあった。何か選んでみるか……。いや、貴金属ジャラジャラなど、僕には似合わないと思う。
そうなると、ブランド物の服とか買ってみるか? でも、お金がないんだよな。
そういえば、正社員並みの給料が支払われるんだった。給料が入ったら、一着くらいなら良いかな?
少し考えて、ストアの〈衣類〉をタップした。
「最近の流行とかは、分からないけど、元の世界でも着れる服はないかな……」
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