第25話 仕事2
バイトを始めて、二日が過ぎた。
今のところ、特にバイト生活に問題はなかった。
僕の作業した製品は、品質的に良い出来だと言われたからだ。特に何も言われる事もなく、作業は継続している。
さて、今日も頑張るか。
だけど、ここで佐藤係長から意外なことを言われた。
「二階堂君。かなり早いが配置転換だ。次は、装置のオペレーションを行って貰いたい」
え? 作業は気に入っていたんだけどな。
「そうですか。分かりました……」
こうして、別な建屋に移動となった。
美人な三人の女子社員とはしばらく会えなくなるな。いえ、他意はないですよ?
少しだけ楽しかっただけです。はい……。
◇
「部品をこの様にセットして、装置のパラメータを操作して、微調整を行う」
説明をしっかりと聞き、メモを取る。
ここで、〈称号:解読師〉が働いた。 解る……。先輩の言おうとしていること、説明書の内容。
装置の不具合部分まで感覚で分かってしまった……。
これは便利だな。
その後、作業を見て貰い、合格を頂いた。そして一人で作業を行う。
同じ機械が複数台あるだけなので、作業は全て同じだ。覚えてしまったので特に問題もない。
工場は良いな。作業に没頭出来る。僕に合っているかもしれない。
高校の教師は、僕に営業職とかを勧めて来た。
嫌々受けた面接は、それは落ちるか。質疑応答も全然だったし。
そんな事を考えている時であった。装置が止まる……。
アラームが鳴ったのだ。
さっき見た不具合箇所だな……。近くに工具も部品もある。部品交換だけだし、直してしまおう。
手早く部品を交換する。ベアリングという回転系の部品だった。これは、消耗品なんだな。
その後再スタートさせると、スムーズに流れた。そして、十二時を迎える。
「お疲れ様。明日もよろしく頼むね」
「はい。お疲れ様でした。それと、エラーで止まったので部品を交換しておきました」
驚く、現場責任者さん。
「君は、工学の知識があるのかな? 高卒と聞いたけど……」
「いえ……装置が止まってしまったので、不具合箇所を見つけて交換しただけです」
「そうか……、でも連絡はして欲しかったな」
「あ、すいませんでした」
その後、問題なしと言うことで、帰ることにした。 報連相……。反省しないとな。
◇
次の日、また配置転換となった。装置のオペレーターは一日で終わり?
向いていないと判断されたのかな?
佐藤係長に連れられて次の作業場へ。
「ちょっと困っている事があってね……。装置がたまに止まるんだ。原因を探って貰えないだろうか?」
「僕にですか? 出来るとは思えないのですが……」
「期間は一週間取っている。一週間後に分からなかったという報告でも構わないので、見て貰いたい」
良く分からないな……。バイトの仕事とは思えない。
僕には、工学の知識も、装置の知識もないのに……。
椅子を用意されて、装置を眺めていると、突然止まった。オペレーターを呼ぶ。
「頻繁じゃないんだけど、こうも停止されるとね。ラインが止まってしまうのだよ。本当に困る」
その後、オペレーターが、再起動させて生産再開。
ふむ……。
また止まった。装置のフタを開ける。〈称号:解読師〉が働く。
「これ、原因箇所は一つじゃないんだ……」
何処が悪いのかは解る。それをメモした。計五ヶ所だ。
ノートに絵を描いて、説明書きを入れる。これで分かると思う。伝わらなければ、質問が来るはずだ。
ここで、十二時になった。
佐藤係長に、ノートとメモを渡して、今日も終わり。帰路に着いた。
故障個所が合っていると良いな……。
◇
五日目。明日は休みだ。とりあえず頑張ろう。
佐藤係長が来ると、また配置換えと言われた。
「不良が多発しているラインがあってね。原因調査をお願いしたい」
僕バイトなんだけどな……。
多分だけど、〈称号:解読師〉が役に立っているんだと思う。
そういえば、昨日調査した装置は、数人掛かりで分解していた。装置トラブルの原因は分かったのかな?
賃金が出ているのだし、不満を言うことは出来ない。ここは従わないといけない場面だ。
もう学生ではないのだ。不満もあるけど、ここは従おう。
過去の調査報告書を受け取り、目を通した。その後、製品と装置の説明を受ける。
だけど、これは難しかった。一日じゃ解読出来ない内容だ。
「佐藤さん、これは、僕には無理かもしれません……」
弱音が出てしまった。
「まあ、今日から来週末までは、原因調査をして貰いたい。それでダメなら、次に行こう。
それと気にしなくて良いよ。この数年誰も解決出来なかった内容だからね」
そんな問題を僕の仕事にするの?
僕はバイトだよ?
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