第24話 仕事1

 朝起きて、身支度を整える。

 僕は癖の強い髪なので、寝ぐせを整えることに時間を割いた。

 整髪剤を買った方が時間の節約になんだろうけど、今はいいや。


 自転車に乗って通勤経路を進んで行く。

 今日は快晴だ。風が気持ち良い。

 サイオン製作に着いて、指定されたロッカーにて制服に着替える。


「おはようございます」


「あ、おはようございます」


 見知らぬ人から挨拶された。僕も挨拶を返す。

 これが、社会人なのだろうな。学生時代は、無言で教室に入っていた。

 『学生気分が抜けてない』と指摘されたんだ。都度、意識を変えて行こうと思う。

 朝礼が始まり、挨拶する。


「本日よりお世話になることになりました。二階堂優莉です。よろしくお願いいします!」


 結構大きな拍手が鳴った。

 そして、女子社員が、キャアキャアと騒いでいる。何だろう?


 その後、皆仕事に取り掛かった。

 僕の研修を見てくれるのは、佐藤係長だった。


「今週は、まず製造現場で働いて貰う。

 今日はアナログな作業を四時間行って貰うことになっている」


「はい! 何でも言ってください」


 こうして、仕事に就くことになった。


「この製品は、二十年前に作られた物なのだが、今だに生産を止められない物なんだ。単純作業なんだが、手作業が多くてね。若い人に任せると根を上げてしまう」


 作業は、リード成型と言うものだった。銀製のリード(配線)を指定の形に曲げるだけ。

 機械化も検討されたそうだけど、採算が合わず導入は出来ないらしい。


「ノルマはありますか?」


「……ノルマはないかな。まあ、作成数と不良数で君の評価となる。気を張らずに、頑張ってみてくれ」


 そう言うと佐藤係長は、出て行ってしまった。

 老年の方に、作業方法と出来栄えを教えて貰う。

 この作業は、僕に合っているな。誰とも話さずにすみ、作業に没頭出来る。

 でもちょっとだけ、保険を掛けるか。


『ステータス』


 知力をタップする。


-----------------------------------------------------------------------

知力:25%

→記憶力:13%

→演算力:15%

→集中力:25%→35% (+10%)

→発想:17%

→センス:10%

→反射:30%

→視力:40%

→聴力:35%

→嗅覚:35%

→味覚:30%

→触覚:20%

-----------------------------------------------------------------------


 集中力を上げた。

 何も考えることなく作業を行うと、十時の休憩になった。

 休憩所で、コーヒーを飲む。すると、二十歳前後の女子社員三人に囲まれた。


「ねえねえ。優莉君は何処から来たの? 訛りも違うし、別な土地から来たのでしょう?」


「えっと、地元は電車で四時間くらい離れたところです。祖母の家を貰ったので、引っ越して来ました」


 その後、キャアキャアと会話が続いた。

 十分間の休憩が終わり、作業に戻る。

 ちなみに、心臓がバクバク言っています。動悸がすごいです。三人共、綺麗な人だったし……。


 気を取り直して、作業に没頭する。

 あっという間に、十二時になった。僕の作業時間は終わりだ。

 ここで、佐藤係長が来た。


「……お疲れ様。すごい量を作ったね。後工程で評価して貰うので、明日改善点などあったら伝えるよ」


「はい、ありがとうございます。それでは、お先に上がらせて貰います」


 そう言って、退社した。食堂もあるそうなのだけど、正直晩ご飯が怖い。

 特にお腹も空いてないので、問題ないけど。





 祖母の家に帰って来た。


「ふう~。緊張した」


『お疲れ様でした。初日にしては上出来だったんじゃないですか?』


 上出来き? そうかな? とりあえず、悪いことは起きなかった。


「西園寺さんが来るまで、六時間以上あるので、魔物の討伐を行いたいと思いうのですが、大森林はどんな状況ですか?」


『う~ん。先週だけで、周辺の魔物はいなくなってしまったので、時間の無駄かもしれませんね』


「城塞都市ダルクはどうなっていますか?」


『モニカさん達が頑張っているので、順調ですね。作物も順調に芽を出し始めました』


「……することがないですね」


『フルタイムで契約すれば良かったのに……。でもそうですね。今のうちに魔導具の練習をしましょう』


 サクラさんの提案に乗り、ログハウスに移動する。





「剣と槍の素振りですか?」


『投擲だけでは、そのうち倒せない魔物も出てきます。今のうちに慣れておいてください』


 サクラさんに教わりながら、剣を振ってみる。

 始めはヨロヨロしていたけど、数時間後には重心を安定させて素振りを行う事が出来るようになっていた。

 槍は、とにかく突きの連打を繰り返すのみだ。


『そろそろ、戻りましょうか。時間です。

 もうすぐ、麗華さんが来ますよ~。それと、アドバイスです。そろそろ、〈西園寺さん〉は止めてあげたほうが良いですよ~』


「今日は一日が短いですね。充実している感じがします」


 マメが潰れた掌を見て、苦笑いが出た。

 その後、体を拭いて、着替える。

 祖母の家に戻り、西園寺さんを待つと、食材を買い込んで来た!?


 その日の晩ご飯は、西園寺さんがキッチンで料理を作ってくれて、美味しく頂きました。

 ちなみに僕は、ずっと正座していました……。

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