第101話 ホスエとマルコ
「手の皮が……」
「最初はそんな誰だってそんな感じだよ。その内、手の皮が厚くなるから、今だけは我慢だ」
ゲルハルトが出立して二カ月、そしてラインハルトを引き取って一ヵ月。
屋敷での生活に慣れてきたラインハルトも、ホスエから剣を習っている。
剣士になるのではなく、最低限チンピラ相手に身を守れる程度になってもらうつもりだった。
ラインハルトを一番歓迎したのはラウルだ。
ようやく自分にも弟分ができたからだ。
マルコは”ラウル兄貴”と呼んでくれるが、やはりホスエの子供という印象が強いので先輩風を吹かせない。
その点、ラインハルトは扱いやすい。
年が近く、同じ孤児という共通点がある。
それに、先輩風を吹かすといっても威張り散らすわけではない。
ちょっと物事を教えてやったりする程度だった。
今まで自分が教えられる側だったので、人に教えることが楽しいようだ。
「痛みを我慢する必要はない」
ラウルとラインハルトの会話にホスエが入ってくる。
鍛錬中なので、すぐ近くにいるので当然だ。
それに少人数での指導だ。
指導者として目が行き届かないなんて事はない。
ホスエは小さな壺を取り出した。
「ジョシュアの兄貴……。やっぱり、それ使うんですか?」
「もちろんだ。最低限、自分の身を守るには、まだまだ鍛錬の時間が足りない。来月にはソシアに向けて出発するんだ。俺達が居なくなるまでに、少しでも長く鍛錬しておかないとな」
壺の中から緑の粘液を指ですくい、ラインハルトの潰れた豆のところに塗り付ける。
「これで治った。さぁ、続きだ」
「はい……」
ホスエのスパルタ教育。
多少の怪我をしても、すぐに治療されて続きをやらされる。
鍛錬し始めた当初、あまりの厳しさにテオドールとラウルは一緒に嘆いたものだ。
その点、ゾルドは凄かった。
肉体的な疲れがまったく見えない。
さすがは魔神というべきか。
ラウルは素直に関心していた。
いくらやっても疲れないお陰でホスエの指導に熱が入り、精神的には疲れ切っているように見えるがきっと気のせいだろう。
「ホスエの兄貴はいつもこんな感じなんだ。けど、本当に強くなれるから頑張ろうぜ」
「はい、ラウル先輩」
”ラウル先輩”
その響きに、ついつい照れてしまう。
スラムでもテオドールグループ内の最年少の構成員だったために、今まで言われた事がなかった。
弟分ができたので、良い恰好を見せようとラウルのやる気にも良い影響を与えている。
ラインハルトも、ラウルの態度に喜んでいた。
魔神の側近となれば、もっとギスギスしていて権力争いをしているイメージだった。
意外とフレンドリーなので、逆に戸惑っているくらいだ。
「そこっ、怠けるな! 素振り100回追加だ!」
「はいっ!」
指導中のホスエは非常に厳しい。
やるべき事をやって休憩するのなら良いが、メニューをやり切る前に休むとしっかりと注意をしてくる。
だが、それも全て生徒のためだ。
半端な意識で武器の扱うと怪我を誘発するし、身に付きにくい。
教えるからには、そういった部分にも気を付けている。
「話しかけて悪かった。さぁ、残りを頑張ろう」
「そうですね」
真面目に素振りを始めた二人を見て、ホスエは満足そうにうなずいていた。
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指導が終わると、ホスエはゾルドに話しかけた。
「アダムス兄さん、何か良い方法ないかな」
「えぇぇぇ……」
(いつも思うが、こいつ指導中と態度代わり過ぎだろう……)
指導中の堂々とした教官や師匠などの雰囲気が消え去り、悩める一人の青年になっていた。
こういう態度の時にされる相談はロクな事がない。
ホスエは普通のお願いだと、こんな態度にはならないからだ。
そんなホスエが言い辛そうにしている。
ミランダの時もそうだった。
ゾルドには嫌な予感しかしなかった。
「予定では来月くらいにゲルハルトが戻ってくるよね? それまでになんとかしておきたいんだけど……」
「……なにをだ?」
嫌だったが聞くしかない。
来月のソシア行きはホスエが中心人物だ。
何か思い残すことがあって、パーティ全滅なんて考えたくもない。
憂いは早めに取り除いておく必要がある。
「マルコの事なんだけど……。お父さんって言ってくれないんだ」
「なんだ、そんな事か。懐いてくれているんだから気にするなよ」
「そんな事じゃないよ! 大事な事なんだよ!」
確かにマルコはホスエに懐いている。
だが、それはホスエの強さにだ。
”ホスエ兄貴”と呼ぶように、ホスエの事を父親として慕っているわけではない。
ミランダが”パパ”と呼んでくれているので、なおさら気になってしまっていた。
「だからって、俺に聞かなくても」
「ミランダの時もなんとかしてくれたし……。お願いだよ、何か考えて欲しいんだ」
”一度成功した神頼み。願わくば、もう一度”
ホスエはそう思って、ゾルドにすがる事にしたのだった。
しかし、頼られる側は迷惑だ。
ミランダは土いじりをさせていたら勝手に慣れただけだ。
おそらく、ゾルドが何もしなくても屋敷の生活に慣れていただろう。
それならば、マルコの件はどうか。
そろそろ難しい年頃だ。
素直にお父さんと呼ばせるのは難しいだろうと、ゾルドは思っていた。
そこへ、救いの手を差し伸べたのはラインハルトだ。
「それなら、孤児院に入れてみたらどうでしょう」
「なんだってっ」
その場に居たラインハルト以外全員の驚きの声が上がる。
この発言で焦ったのはホスエだ。
「ダメだ! いくらお父さんと呼んでくれないからって、捨てるような事は絶対にできない」
最初に頑張ると言った。
お父さんと呼んでくれない程度で捨てるくらいなら、最初から引き取ったりはしない。
ただ、ラインハルトもそこまで薄情な提案をしようと思ったわけでもなかった。
「違いますよ。マルコはお母さんと一緒にいて、妹もいた。一回一人にしてみて、家族がいること。家族になろうとしてくれる人のありがたさを思い知らせるんです」
「お前スゲェな」
ゾルドはその発想に関心する。
しかし、ラインハルトはあまり嬉しそうではない。
むしろ、悲しそうな顔をしていた。
「両親を失った時の喪失感は、言葉では言い表せないくらいでした。一時的にでもそんな思いをさせるのは辛いですけどね」
そんなラインハルトの様子を見て、ホスエはなかなか”やろう”とは言い出せない。
父親として認められる方法ならば、他にもあるのではないかと思ったからだ。
自分の都合で、マルコに悲しい思いをさせるなんて本末転倒だった。
だが、そんな事を気にしない者もいる。
「かなり効果がありそうだな。やるだけやってみようか」
ゾルドだ。
自分で何かいい方法を考えるよりも、とりあえずラインハルトの案を使って上手くいけば良し。
失敗したなら”地道に時間をかけて頑張れ”とホスエに言える。
最悪の場合”ラインハルトの提案だから”で責任を押し付けられる。
ゾルドにはデメリットがない。
「そんなっ、酷いよ」
「酷くなんかないさ。ラインハルトが居なくなった後の、今の孤児院がどうなっているのか。それを調べに行ってもらうって考えるんだ」
”そんな事をしてはいけない”という理性と”お父さんと呼ばれたい”と思う感情。
その二つがホスエの心の中で戦っている。
やはり、自分の感情を優先して一時的にとはいえ、マルコに嫌な思いをさせるのに抵抗があるようだ。
「同年代の友達も見つかるかもしれないぞ」
心の葛藤も、ゾルドの一言で終わりを告げる。
マルコにもメリットがあるのなら、悩む必要はないのではないか?
そう思うと、実行する方に心の天秤が傾いてしまった。
「確かに年の近い友達は必要だよね」
「そうだ。上手くいけばミランダの友達を探してやってもいいな」
今の屋敷は高級住宅街にある。
周辺に住むのはお坊ちゃまだ。
娼館育ちのマルコ達とは友達になれない。
そう、ゾルドは考えていた。
「そうだ、ラインハルト。孤児院の子達に知り合いが居るのなら、こういう事を頼めないか」
ゾルドはラインハルトに耳打ちする。
その内容に、ラインハルトは顔をしかめながらも、うなずく事で答えた。
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「お前がマルコだろ。俺はデニス、こっちは妹のカルラだ。よろしくな」
「うん、僕がマルコだよ。よろしく」
孤児院ではまだまだ孤児が集められている。
一人ずつみんなの前で紹介したりなどしない。
だからといって、すでに孤児院にいた子供達は新顔を放置したりもしなかった。
年の近い子供が声をかけるようにしている。
だが、今回は別だ。
ラインハルトから、マルコと仲良くしてやって欲しいと一言言われていた
マルコも娼館に居た時の服を着ているが、身綺麗さは浮浪児とは段違いだ。
普通の孤児ではないと、ラインハルトのグループはみんな知っていた。
知らないのは、それ以外の元浮浪児や”孤児院が出来たのなら安心だ”と気兼ねなく捨てられた子供達だ。
「今日は勉強の日だ。学習室に行こうぜ」
「わかった」
”勉強””就職支援””休み”を毎日変えている。
今日は勉強の日。
子供にとって大変な日だ。
「マルコはどのくらい文字読める?」
「数字は読めるけど、文字はあんまり……」
ミランダのように絵本を読んだりしないマルコは、文字が読めなかった。
”〇〇号室の掃除をやっておけ”と言われるので、部屋番号を覚える内に数字は覚えたが、文字に関してはサッパリだ。
ホスエに引き取られて以降も、剣の指導や、ボール遊びなどの運動優先で過ごしてきたので学んでいない。
「それじゃあ、文字の書き取りからだね。私が教えてあげる」
「ありがとう」
お礼を言ったはいいが、教えてくれるのはカルラだ。
妹のミランダくらいの年の女の子に教わるという事は、少しマルコのプライドを傷つけた。
それでも、マルコは孤児院がどんなものか見てきて欲しいと頼まれている。
勉強をせずに遊んで怒られている子もいるが、軽い注意程度だ。
マルコもあちらに混じって一緒に遊びたいと思った。
しかし、実際に勉強に参加して試してみた方が良いと思い、マルコは我慢して文字を教わっていた。
昼食が終わり、午後も勉強をしているマルコ達のもとに、少し年長の者が近づいてきた。
「お前、親に捨てられたんだろ」
「へっ?」
あまりにもストレートな発言にマルコは驚いた。
”何を言っているんだ?”と思っている間に、年長の少年がさらに続ける。
「俺もだよ。母さんが再婚するから、男の子はいらないってさ。跡継ぎの邪魔になるからな」
「僕は捨てられてないよ」
マルコは反論するが、言われた事が心に残る。
テレサはホスエとの生活を喜んで受け入れている。
今は内縁の妻という立場だが、その内に結婚式を挙げるはずだ。
そうなった時、自分も家族の一員になると思っていた。
ホスエもマルコに優しくしてくれている。
「俺もそう思ってたさ。けど、再婚相手のオッサンを”お父さん”って呼べなくて”オジサン”って言っていたら、ここに預けられたんだ。”お父さん”って呼べるようになったら、迎えに来てやるって言われてさ」
「呼んだらいいんじゃないの?」
「呼べないんだよ」
年長の少年は悲しそうな顔をして、薄っすらと涙を浮かべている。
「もう、呼べないんだよ……。預けられた次の日に、ここを抜け出して家まで行ったらもう引っ越してた。こんな事なら、もっと早く”お父さん”って呼べば良かった」
鼻をぐずらせ、涙声になっている。
マルコはテレサの事を信じている。
だが、娼館では”父親のわからない子がいると身請けされない”と噂しているのを聞いた事があった。
母を信じてはいるが、胸の奥がざわつく感じがあるのは確かだった。
ホスエを”兄貴”と慕ってはいる。
しかし、一度も”お父さん”や”パパ”と呼んだ事などない。
そして何よりも、自分一人だけ孤児院に送られた事が不安になった。
マルコは”孤児院の様子を見て来てくれ”というゾルドの頼みと”年の近い友達を探して来なさい”とホスエに言われて来た。
”友達探しなら、ミランダも一緒に連れて来ても良かったんじゃないか”と不安になったのだ。
「でも、僕は捨てられてない」
そう言う事で、マルコは自分の中で渦巻く何かを抑えようとした。
だが、年長の少年は首を振る。
「俺もそう思っていたさ。でも、いつまでも迎えが来なかった。今も認めたくない。お前も迎えが来なかった時に捨てられたってわかるんだよ。ようこそ、孤児院へ」
「そんな事……」
否定しようとするマルコの脳裏に、以前にあったゾルドとのやり取りが浮かび出た。
『おやっさん、いつもありがとうございます』
『急にどうしたんだ?』
『美味しいごはんにフカフカのベッド。最高です』
『それくらい気にするな。ジョシュアがそう望んでいるからだ』
『ジョシュアの兄貴が?』
『そうだ。いいか、勘違いするなよ。俺はお前のためにやっているんじゃない。ジョシュアのためにやっているんだ。ジョシュアを悲しませるような事だけはするな。やったら放り出すからな』
『はい、おやっさん』
もしかするとホスエの事を”お父さん”と呼ばない事で悲しませていたのかもしれない。
子供相手でも、意外に大人げないゾルドの事だ。
”マルコはもういらない”と思えば、本当に捨てるくらいはするだろう。
思わず自分の胸に手をやり、動悸を抑えようとする。
だが、抑えられない。
胸の内に抑えられない気持ちは、外へと吐き出された。
「そんな事ない!」
マルコの拳が、少年の顔にヒットした。
否定したい気持ちが拳に乗せられている。
マルコもまだ子供。
感情を抑えきれず、行動に出てしまった。
「この野郎」
少年もやり返す。
一発ずつ殴りあって終われば良かったのだが、二人はそのままエスカレートしていく。
「喧嘩はダメだってば、先生!」
デニスが大人を呼び、二人の仲裁に入るまで十発は殴り合っていた。
周囲の子供達は止めに入ろうともしなかった。
孤児院では、このくらいの喧嘩はよくある光景だ。
それに感情を吐き出した方が楽になると知っているからだ。
勉強の時間も終わり、マルコ達は孤児院の玄関ホールの椅子に座っていた。
痛む顔を手で押さえている。
「馬鹿だな。あんなのに一々殴りかかっていたら、これからの人生生きていけないぞ」
「でも、僕は捨てられていない。あいつとは違うんだ」
デニスが宥めるが、マルコの気持ちはまだ静まる気配がない。
迎えが来るのを確認するまでは無理だろう。
「僕、外で待ってる」
逸る気持ちを抑えきれず、マルコは施設の外で待つことにした。
それにデニス達も付いて行く。
外は日が暮れて夕焼けが街を染めている。
いつもは気にした事はないが、今日はその光景がマルコの心を不安にさせていた。
日が暮れるまでに迎えが来なければ、捨てられたのかもしれないと思ってしまうからだ。
「あっ、来た」
マルコが見つけたのはホスエだ。
馬車ではなく、馬に騎乗して一人でマルコを迎えに来ていた。
「なんか凄く恰好良い人だね」
「そりゃそうさ。しかも、すっごく強いんだ」
そう、ホスエは人に自慢できるだけの人物だ。
人に言われるまでもない。
よくわかっている。
そんな人が自分を迎えに来てくれた。
屋敷の使用人が迎えに来ても今のマルコには嬉しかっただろうが、ホスエが来てくれた事で喜びもひとしおだ。
「待たせたかな」
「ううん、大して待ってないよ」
待ちわびてはいたが、喜びを表に出す事はしない。
どこか気恥ずかしいからだ。
「君達がマルコの相手をしていてくれたのかな。本当にありがとう」
「いえ、気にしないでください」
答えたのはカルラだ。
デニスはビシッとして、恰好良いホスエを見て言葉がなかなか出てこない。
神教騎士団員として、馬上での姿勢などをしっかりと受けていたお陰だ。
騎士として、戦う者としての格好良さが現れている。
ホスエはマルコに手を伸ばす。
そして、馬上に引き上げてやった。
自分の前に座らせ、落ちないように手綱を持たせる。
「マルコもお礼を言いなさい」
「うん。今日はありがとう。デニス、カルラ。また会おうね」
「もちろん」
「マルコも元気でね」
お互いに手を振り、それを確認したホスエは馬を歩かせ始めた。
「同じ年頃の子が一杯いただろう? 友達はできたか?」
「今日は勉強の日で、あんまり遊べなかったから友達は……。それよりも嫌な奴が居たんだよ」
マルコは年長の少年の事を話し始めた。
それをホスエは静かに聞き、時々相槌を打ってやる。
「でも、喧嘩はしたらダメだぞ。喧嘩のために技を教えているわけじゃないんだ。人を守るための技なんだからな」
「わかったよ……。お父さん」
マルコの後半の言葉は、非常に小さかった。
「ん、なんだって?」
「べ、別になんでもないよ」
照れ臭そうにしているマルコの頭を、ホスエは優しく撫でてやる。
かすかにではあるが、本当は聞こえていたのだ。
(一歩前進かな)
一度”お父さん”と口にしてくれた。
ならば、二度目もそう遠くない内にあるだろう。
ゾルドとラインハルトにお礼をしなくてはならない。
馬に乗っているにも関わらず、二人の帰路は軽やかなステップをしているようだった。
「ようやく帰ったか」
門の影から一人の少年が姿を現す。
先ほど、マルコと喧嘩をした少年だ。
「大変だったね、兄ちゃん」
彼はデニスとカルラの兄だ。
今回、ラインハルトにマルコの世話を頼まれただけではない。
ゾルドの依頼も実行していた。
”本当に捨てられたんじゃないかと不安にさせて、迎えに来たホスエをお父さんと呼ばせる作戦”
無駄に長いネーミングだが、孤児院にいるラインハルトの仲間に全て任せるという中身はスカスカの作戦だ。
しかし、デニス達のお陰で成功した。
これでホスエも憂いなく出立できる。
「ねぇ、お兄ちゃん。なんで私達にお父さんはいないの?」
遠ざかるホスエの背中を見ながらカルラがこぼした。
それをデニス達、兄二人は困惑する。
「親に捨てられたからな」
他の事は言えない。
これが全てだ。
先ほどマルコにした話は大体本当の事だ。
違うところは、娘のカルラも捨てられているという事だった。
「私、あの子よりも勉強もできるよ。文字だって読めるし、計算もできる。なのになんでお母さんはいないの?」
「……親に捨てられたからな」
カルラの感情の籠った言葉に、デニス達も少し感情を動かされる。
勉強を頑張ろうが、良い子にしていようが親が現れるわけではない。
「私、喧嘩もしないよ……。家の手伝いだってちゃんとするよ。お父さんやお母さんが欲しい……」
「カルラ」
兄二人で泣き始めたカルラを抱きしめてやる。
そうしてやる事で、自分達も泣きそうになるのを我慢しようとしていたのだ。
だが、それは止められなかった。
カルラにつられてもらい泣きをし始めた。
親の居ない生活に慣れたといっても、目の前で見せつけられれば悲しくもなる。
ホスエとマルコの親子関係は、三人の子供の古傷をエグる事を代償に一歩進んだ。
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