第98話 手駒の収拾 3
ゲルハルトを仲間に引き入れ、昼食後にゾルド達は屋敷の音楽室に集まっていた。
「相談役として新しい仲間も入ったところで、第一回天神対策会議の開催を宣言する」
そう言ってゾルドが拍手をすると、レジーナ、ホスエ、テオドール、ラウルの四人が拍手をする。
ゲルハルトはノリが悪いようだ。
ゾルドが言ったように、相談役が決まったので今後に向けての話をする事にした。
今回は分厚い壁で防音に配慮されている屋敷の音楽室での会議だ。
ゲルハルトの紹介も終わったので、とりあえずその力を見せてもらおうと企画したものだ。
「まずは基本方針として”味方を増やす””各国の仲違いを狙って争わせ、天神側陣営の戦力を削ぐ”という方針で行動する。さぁ、忌憚ない意見を言ってくれ。特にゲルハルト。お前には媚びるのではなく、有用な意見を期待している」
「そうか。なら、私に提案がある」
最初に言葉を口を開いたのは、ゾルドの期待した通りにゲルハルトだ。
(さぁ、お前の力を見せてみろ)
ムカつく奴を、わざわざ手の込んだ方法で味方に引き入れたのだ。
これでダメな奴だったら、三日は寝込むだろう。
「第一回魔神反省会議の開催を宣言する」
「はぁっ!?」
思いも寄らぬ言葉に、ゾルドは驚きの声をあげる。
「色々と言いたい事があるが、今回は最近の事だけにしよう」
ゲルハルトは手元の紙に目を落とす。
午前中の内に、要点をまとめておいたようだ。
「5兆エーロ獲得後、一週間は大人しくしていた。これは金を狙った者の襲撃を警戒していたという事で理解できる。では、その後の二週間は何をしていた?」
咎めるような厳しい声。
ゾルドがほぼ対等な立場でと言ったので、遠慮なく追及するつもりのようだ。
ゲルハルトは、ゾルドがボスであることは理解している。
外部の人間がいないところでは、対等な言葉遣いを許可されていたからこそ、こうして使っているだけだ。
しかし、今までそんな者が仲間にいなかったので、ホスエが少しキツイ目でゲルハルトを見ている。
「ジョシュアの妻、まぁまだ結婚してないが。テレサの騒動があったからな。ジョシュアに頼まれて、ミランダの相手をしていた」
「本当に助かったよ。ありがとう」
「いいさ。良い気分転換になった」
ゾルドは無駄な事をしていない。
ホスエはゾルドをカバーをするようにお礼を言った。
ゾルドのお陰で、ミランダはレジーナと一緒に庭いじりをしたり、テレサと刺繍をしたりと色々とやり始めるようになった。
ホスエの感謝の気持ちは本物だ。
「それは関係ない」
だが、ゲルハルトは一言で切り捨てた。
「人としては結構。弟分の家族にまで気を回す良い人だと言えるだろう。それでは、閣下。あなたは何者ですか?」
「……魔神だ」
「そう、魔神。その事を忘れてはいけない。天神に対して圧倒的に不利な状況にあるにもかかわらず、なぜ行動しなかったのか。他の事をやった上で、ミランダの事も対応できたはず。ミランダの事があったからと、行動しなかった言い訳にしてはいけません」
確かにテレサの事があり、レジーナが戻ってくるまでの二週間。
目立つ行動はしていなかった。
とはいえ、遊び惚けていたわけではない。
「その間は歴史の勉強をしていたんだ。この世界の事を知れば、何かの役に立つかもしれないと思ってな」
「そういう事ではない」
ゲルハルトはゾルドの言い訳をまた切り捨てる。
「ハストン宰相にジョシュアの罪を揉み消して欲しいと頼みに行ったのなら、なぜそのまま繋ぎを持とうとしない? 宰相秘書官のティムもそうだ。秘書官といえば大した事はなさそうだが、宰相秘書官というのは直接の権限がなくても、その影響力は大きい。”助けてくれてありがとう”と、お礼を言いに接触する機会もあった。人との繋がりを保つ事が人脈というのだ。一度助けてもらって”はい、おしまい”では何の意味もない。せっかくの機会なのに、それをまったく活かせていない」
ゲルハルトの言葉に熱が籠る。
彼からすれば、凄まじくもったいない行為だ。
通常であれば、一国の指導者層と会う事なんて、難しいどころか不可能。
士官前のゲルハルトならば”話し合う機会を無駄にするな”と殴り飛ばしていたところだ。
ゲルハルト自身、フリードと会うまでは士官に苦労していた。
フランクな性格のフリードだったからこそ、直接会う機会が作れただけであって、普通は伝手が無ければ門前払いされる。
今のゾルドは国王にだって、気楽にアポを取れる立場だ。
それを活用しない事に、憤りすら感じていた。
「そもそも、孤児院でアルベール王子と会った時に金を渡した事が間違いだ。直接、貴族や富豪に投資した分の支払いを自分が肩代わりすると申し出れば、その貴族や富豪に恩を売れた。王太子就任の祝いで金を渡しても、評価が上がるのはアルベール王子だけだ。”王子が上手くやってアダムスから金を引き出せた”と周囲の者が思うだけだぞ」
ゲルハルトの勢いに、ゾルドもたじろいでしまう。
だが、やられてばかりでもない。
ちゃんと成果を上げた事を証明する。
「そう責めるな。ちゃんと誓約書も貰っている。この誓約書でベネルクス王家は思いのままだ」
孤児院で会った時に書かせた物をゲルハルトに見せる。
”アダムス・ヒルターの正体を知った上で金を受け取った”と書かれている。
「プローインのように魔神の協力者だと潰されたくなければ、俺の言う事を聞けと脅す事ができる」
自信満々に言うゾルドに返って来たのは、ゲルハルトのため息だ。
「プローインの時とは状況が違うという事はわかっているのか? あの時は神教騎士団の護送部隊が全滅した。その責任を取らせる相手にプローインが選ばれただけだ。ちょうど周辺国から恨みを買っていたからな」
ゲルハルトは苦々しい表情をしながら話した。
この辺りの話も、全てゾルドから話を聞いている。
ゾルドに協力すると決めた時に、ある程度の折り合いは付けたはずだった。
それでも、プローインの話題が出ると心が痛む。
自分を認め、引き揚げてくれたのはフリードだ。
参謀として王の近くにいるだけではなく、前線も経験しておいた方が良いと気を使ってもらったりもしていた。
プローイン軍人として栄達も望めたし、フリードの下でプローインは大国としてエーロピアンに君臨する国にだってなれかもしれない。
しかし、ゾルドのせいで死んだと責めるのは簡単だが、自分が進言した責任も無視はできない。
もしかすると、本当に魔神と共同戦線を張っていた方が良い未来があったのかもしれなかった。
ゲルハルトの心に深く残った傷跡だ。
この事は一生忘れるつもりはない。
「しかし、ベネルクスは違う。アダムス・ヒルターは経済界の成功者として名が知られている。それに一部の教会関係者にも”天神の秘密任務を任された者”として認知されている。そんな紙切れ一枚でベネルクスを潰す事なんてできないぞ。”魔神だと知ってサインしたわけじゃない”と言い張られたら、プローインのように”じゃあ潰そうか”なんてならない。考えが甘すぎだ」
ゲルハルトの容赦ない言葉に、ゾルドは返す言葉が無かった。
何か反論したいところだが、そうしなかったのは、そう言われればそうだとしか思えなかったからだ。
「それじゃあ、どうしろっていうんだ……」
「いきなり大きな事からやろうとすると、その目的の大きさに足がすくんでしまう。まずは小さな事から始めよう」
ゲルハルトは周囲を見回した。
その視線は、テオドールとラウルのところで止まる。
「まずはテオドールとラウル。この両名はスラム出身だというのに、すでに一般的な騎士の腕前を凌駕している。指導者としてのジョシュアの腕が良かったのか、それとも本人たちの才能と努力の賜物か。二人にはこのまま頑張ってくれればいい」
「おうよ」
「頑張ります」
二人の良い返事にゲルハルトは満足そうにうなずく。
「ジョシュア。お前は神教騎士団にいた時、ソシアの魔物掃討作戦に従軍していたか?」
「入団して三年目に所属部隊が選ばれたので行きましたよ」
ホスエは他所向けの言葉使いで答える。
正論だとは思っているが”ゾルドに対して少しキツイのではないか”と思っているので、ゲルハルトに対してどこか隔意のある態度だ。
「結構。ならば、閣下を連れて一度ソシアで魔物相手に戦ってきてもらおう。もちろん、そこの二人もだ」
ソシアでの魔物退治。
その言葉に、テオドールとラウルは顔色を変える。
800年ほど前、天魔戦争が終わった人々が安心して暮らしていた。
しかし、戦争が終わった事で魔族によって戦場へ連れて行かれなくなった魔物が増殖し、ポール・ランド西部にまで大規模な魔物の集団が攻め込んできた事がある。
そのような事件があったので、ソシアだけに任せずに神教庁が定期的に神教騎士団を遠征させて魔物を間引いている。
世界各国から才能ある者を集められた精鋭の神教騎士団。
彼等ですら、神官の手厚い援護があっても、毎年かなりの死傷者が出る。
そんなところへ送られる事に恐怖したのだ。
「ソシアに行くのか? 皇帝にあって、魔物と戦ってやるから仲間になれとでも言うつもりか?」
だが、そんな事情を知らないゾルドは堂々としたものだった。
「違う。ソシア皇帝に接触する前に、まずは強くなってもらわねばならない。今のままでは、巨人連隊にいたオーガやミノタウルスに毛が生えたようなものだからな」
「俺が聞いた話では”魔神は人の恨みを買って強くなる”だったぞ。だから、人を殺さずに、金を集めながら恨みを買う方法をやっているんだが……」
ゾルドの言った事で、ゲルハルトは納得できたと言わんばかりの顔をする。
「あぁ、なるほど。だから、魔神という割りにはこすい真似ばかり……」
”人を騙して軍資金を集めていた”
それを教えた時、ゲルハルトは頭を抱えていた。
しかし、それはゾルドの悪行に対してではない。
魔神の割りには、やる事のスケールが小さかったからだ。
ゲルハルトの中にある魔神のイメージとかけ離れていたせいだ。
これが”どこかの城を襲って宝物庫から根こそぎ奪った””魔神信奉者を使い、強盗、誘拐、窃盗といった事をやらせて稼いだ”という内容ならば、不謹慎ながらも満足できた。
だから、法の範囲内で活動していたゾルドに、正直なところガッカリしていたのだ。
その理由がわかり、ゲルハルトはスッキリした気分になる
「しかし、それは千年前の魔神の事のはず。閣下は別人なのでは?」
「あっ……」
ゾルドはレジーナ以外の者には”神の世界で普通に暮らしていたら、突然この世界に魔神として送られた”と話している。
千年前の魔神とは別人だとハッキリと伝えていた。
そう言っておきながら、自分ではまったくわかっていなかった。
別人である以上、強くなる方法がまったく同じだと限らないのだ。
「閣下は今までまともに戦いもせず、訓練もしていない。このままでは天神どころか、神教騎士団の者にも勝てないだろう」
「天神も訓練なんてやってませんでしたよ」
横からホスエが口を挟む。
どうやら、ゲルハルトの態度にご立腹のようだ。
だが、それで遠慮するゲルハルトではない。
意見を言う事が自分の求められた役割だからだ。
「それは良い情報だな。一刻も早く、一匹でも多く強い魔物を倒し、その命を成長の糧とする。天神と差をつけるチャンスだ」
天神が強くなる努力を怠っているのなら、なおさらソシアに行き魔物と戦うべきだ。
ゲルハルトは、己の考えが間違っていないと確信する。
そんなゲルハルトとは裏腹に、ゾルドは驚いていた。
「魔物を倒してレベルアッ……、強くなるっていうのか?」
「……そうだ。テオドールとラウルのように、鍛錬をすれば技術面では強くなれる。だが、強くなる方向性が違う。自分より強い相手を倒す事で、魔力などといった基本的な能力が増すのだ」
(こんなところでゲームみたいな設定か。ふざけた世界だが、思い当たるところもある)
ポルトの冒険者ギルドで、アルヴェスにけしかけられた三人組の冒険者を殺した時に、体の奥から力が湧いてくるような気がした。
その後のアラン達と戦った時は痛みで気付かなかったが、もしかするとその時もレベルアップしていたのかもしれない。
「雑魚は数多く倒しても無駄なのか?」
「実力差があるほど、強くなりにくいというのが定説になっている」
「そうか」
(つまり、そこそこ強い冒険者と神教騎士団のアラン達を殺して大幅レベルアップ。シュレジエンでの戦いでは雑兵ばかり殺したから、レベル差の経験値補正でまともに経験値を稼げなかったと。テオドール達の事を考えると、武器の熟練度とかもあるのかもな)
ゾルドはなぜ気付かなかったのかと、今更ながら後悔する。
セーロの丸薬のように、すぐに効果の出る薬だってある。
ここは異世界。
ゾルドの世界と同じ理で、世界が動いているとは限らないのだ。
(わざわざゲーム的な世界を作りやがって……。そのせいで異世界だと気付くのも遅れたんだ。こんな世界を作った奴が目の前にいたらぶん殴ってやる)
だが、ゾルドにはそれができない。
いくら不満を持とうとも、手の届かない相手には手出しができない。
無理なものは無理なのだ。
「どの程度の期間と場所を想定しているんだ?」
「移動時間を合わせて往復で半年。ワルシャワからキエフまで。進む速度などはジョシュアの判断に任せて、行けそうならツァリーツィンまで冒険者でもやりながら魔物と戦って進んでもらう。無理をしない程度でな」
”ホスエの判断に任せる”
その一言にホスエは驚く。
「私に一任すると言われるのですか?」
「神教騎士団の遠征の経験があるのなら、この中で一番頼りになるのはお前だ。閣下を兄と敬愛するのなら、しっかりと鍛えてやれ。力が必要な今、優しさこそもっとも残酷な仕打ちだと覚えておくように」
「任せてください」
やる気を出しているホスエを、テオドールとラウルが恐々とした目で見つめる。
厳しい指導をしていた事をゾルドも知っているので、同じようにゾルドも不安そうな目でホスエを見る。
「ゲルハルトが、無理をしない程度にと言った事を忘れずにな」
ゾルドが念のために釘を刺しておくが、ホスエは無駄に良い笑顔を返すだけだった。
ゾルドのためになると思うと、ワクワクする心が抑えられないのだ。
(勘弁してくれよ……)
おそらくスパルタ教育が施されるのだろうと思うと、ぬるま湯の生活に浸かり切ったゾルドはうんざりする。
しかし、必要な事だ。
嫌だからと、逃げるわけにはいかない。
せめて、ゲルハルトにも意趣返しができないかを考えた。
「俺達がソシアに行った方が良いというのはわかった。その間、お前はどうするんだ」
”俺が苦労している時に、お前だけ悠々自適な暮らしはさせない”
そんな小物根性を発揮してみるが、ゲルハルトには通用しなかった。
深い溜息で迎え撃たれる。
「やることが多すぎて、何から手を付ければいいのやら……。昔の部下などに心当たりがある。先ほど閣下が言われた”仲間を集める”を実行するつもりだ。有力者への接触、情報の収集と管理、今後の行動の計画立案などなど……。私一人ではやれることに限度があるからな。例えばソシアの皇帝と接触するよう命じられた場合、移動時間だけで往復二ヵ月は留守にせねばならない。その間、他の計画が停滞するのは避けたい」
ゲルハルトが言わんとする事を、ゾルドは理解した。
一人でできる事には限度がある。
能力があろうとも、時間が足りないのだ。
最低限、指示を出しておけば実行できるだけの人材を集めなければならない。
そして、そんな人材は非常に得難いものだ。
ゾルドが働いていた会社は、数か月毎に計画倒産していた。
その際、新しい会社に誘われるのは、いつも同じ面子だった。
毎回多くの社員が雇われている事を考えれば、最低限必要な能力を持っている者を雇ったり、育てたりするのは非常に難しい事だというのがよくわかる。
プローインが滅んだからこそ、野に下った優秀な人材を直接雇う事ができる。
元軍人のゲルハルトなら、誰が優秀だったかもわかっているだろう。
必要な者だけ拾い上げることができる。
「同時に複数の事を進めるために、参謀役を集めるって事か。しかし、俺の部下になるように説得するのは難しいんじゃないか?」
「そうです。だから、ダメだった時に口止め料として配るのに10億エーロ。そして、心当たりを回るのに三ヵ月ほどの期間を頂きたい。何人かは引き受けてもらえる確信があります。その間は、ジョシュアから剣の修行を受けてソシア行きに備えたり、ベネルクス首脳部との接触をしておいて頂きたいのです」
ゲルハルトの言っている内容は正しそうだ。
だが、どこか態度がおかしいと感じた。
先ほどまでとは違い、今回の要求はどこか言葉が柔らかい。
その態度の変化に気付いたレジーナが、ゲルハルトに厳しい視線を向ける。
「もしかして、お金を持ち逃げするつもり?」
レジーナの発言に、皆の視線がゲルハルトに集まる。
しかし、ただ一人。
ゾルドだけは違った。
「違うな。魔神の側近となれば、下手な額の現金よりも価値がある。そして、こいつは相談役という肩書きに価値を見出したはずだ」
ゾルドは鋭い目つきでゲルハルトを見つめる。
まるで、心の奥底まで見抜くように。
「職業軍人が一線を退いた時、再就職が厳しいと聞いた事がある。一般の会社と違うからな。口止め料として払うのは事実だろう。だが、同時に方便でもある。お前みたいに飲んだくれているかどうかはともかく、仕事が見つからず金に困ってそうな奴に金を配る気だな」
軍人の再就職は映画で見ただけで、詳しい事情はわからないが、駐車係の仕事すらないとか言っていたのを覚えているだけだ。
だが、ゾルドは金の事には鼻が利く。
ゲルハルトが嘘を吐くのが下手だったという事もあるが、隠された嘘をすぐに見抜いた。
実際、ゲルハルトが露骨に顔をしかめた事が、正解だと言っているようなものだ。
「も、申しわ――」
「かまわん。許す」
ゲルハルトが謝罪を口にする前に、ゾルドは許しを与えた。
プライドの高い相手なら、謝罪を口にする前に許す事でプライドを保たせてやる。
それによって、忠誠心を高めようという魂胆だ。
とはいえ、これは打算だけの行動ではない。
「少なくとも、この会議でお前の価値を示した。能力だけじゃないぞ。ハッキリと意見を言う事だ。レジーナとホスエは、その性格上俺に厳しい事を言わない。テオドールとラウルは、俺の事をビビッて厳しい事を言えない。お前の言う事は、俺にとって面白いものではない。だが、必要な事をハッキリと言ってくれている事は高く評価している。後で本当に必要な額を言え。それくらいは用立ててやる」
「はっ、ありがとうございます」
ゲルハルトは思わず敬礼をしていた。
それを見て、ゾルドは満足そうに笑みを浮かべる。
「ただ、今後はもう少しオブラートに包んだ言い方をしてくれると助かるな。正論も感情次第で受け入れにくいものとなる」
「それに関しては今後の課題とし、善処できるよう前向きに検討しておこう」
「する気はねぇって事じゃねぇか……」
お役所言葉の返事に、ゾルドはため息しかでない。
「まぁ、その事は置いておいて。これから私は仲間になりそうな元プローイン軍人を訪ねて回る。その時、諜報関連の人材も探してみよう」
「あぁ、諜報関係に詳しい者なら来月には仲間になる。断片的な情報から俺の正体を見破る奴だ。能力はかなり高い」
ゾルドの指摘を誤魔化そうとして話を進めるゲルハルトに乗ってやった。
「では、政治関係に詳しい者にも当たってみよう。交渉などを任せられる人物がいれば、かなり楽になるはずだ」
「その間、俺はホスエに剣を。レジーナに魔法を教わるとしよう」
「少しずつでもいいから、政府関係者との接触もだ」
「そうだな……」
仲間がたった一人増えただけで、一気にやる事が増えた。
自分一人で考えるよりも、提案してくれる者がいるという事はありがたい。
それと同時に、今までの自分は効率が悪かったという事を思い知らされてしまう。
その事が悲しくもあり、嬉しくもある。
第一回天神対策会議、改め第一回魔神反省会議は成功したといえるだろう。
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