第5話 始まりの街 1
「そういえばゾルド。もし冒険者になるつもりだったら、その丁寧な喋り方は止めておけ」
「なんでですか?」
「荒くれ者の多い冒険者という性質上舐められてしまうからだ。人としてはそれで良くても冒険者としてはもっとくだけた感じでいいぞ。もちろん俺にもだ」
元々ゲーム内では普段通りに話すつもりだった。
それが食あたりで混乱していた事もあって、あのような対応になっただけだ。
フリード本人がくだけた話し方で良いと言うのなら、それを断る理由はない。
「わかった、これからはそうするよ」
フリードの提案に同意した俊夫は、疑問に思っていた事を続けて口にする。
「そういえば、なんでセーロの葉を集めてたんだ? フリードなら魔物でも倒してた方が稼げるんじゃないのか?」
フリードのような体格をしているのならば、魔物退治などの方がよほど稼げるだろう。
効能が高いとはいえ、ボディビルダーのような男がちまちま葉っぱ集めをしている姿が想像できないという事もある。
これは当然の疑問だった。
「この辺りの魔物はたまにゴブリンの小さい群れとたまに飛行する魔物が確認されるくらいで、実際に遭遇するのは狼や熊といった野生動物の方が多いな。ポート・ガ・ルーの立地と治安維持のお陰だが、冒険者には厳しいよな。けどよ、セーロの葉もキロ単価3,000エーロ前後だから午前中で終わると考えたら悪くない収入だぞ」
「そうなのか。でもそれなら競争になるんじゃないか?」
フリードが”そんなことも知らないのか”と言わんばかりに、やや呆れながら首を振る。
「さっきも言ったが、この辺りは軍が魔物を定期的に討伐しているから目ぼしい魔物がいない。だから腕に自信がある奴は他所に行くみたいでな。今残ってる奴らでは狼の群れは厳しいみたいだから、セーロの葉を取りに行く奴も少ないんだ」
「それならパーティ組めば良いのに」
「パーティを組むと一人当たりの取り分が減るだろ。みんなで荷物を持てば動きが鈍って身を守れなくなるし、収入が少ないなら街で出来る仕事をした方が安全で実入りが良い」
「なるほど、そういうことか。……フリードは、まぁ一人で大丈夫そうだもんな」
「もちろんだ。流石に魔法使いなら自衛くらいできるさ」
「えっ、まっ魔法使い?」
フリードに関して、2度目の衝撃である。
1度目の顔と体のギャップも驚きであるが、どう考えても戦士系――むしろバーバリアン――の職業以外に考えられないはずだった男が魔法使いだというのだ。
これには驚きを隠せない。
「いやっ、どう見てもおかしいだろ! その棍棒はなんなんだよ!」
こちらも2度目のツッコミだ。
野犬――実際は狼――は普通だったのに、フリードに関しては見た目がおかしいだけではなく、その中身までおかしい。
そのギャップには、製作者の頭がおかしいとしか思えない。
普通にイケメン魔法使いでいいじゃないか。
そう俊夫が思ったのも当然の事だった。
「んっ? なぜかよく勘違いされるんだが、これは魔法を使うための杖だぞ。戦闘中につい力が入っても折れたりしないように、やや太めには作ってるがこれくらい普通だろ」
「えぇ……、うんそうだね」
やや太めの杖じゃなくて鈍器だろう。
その筋肉質な体で魔法使いは通じない。
鈍器を持ったマッチョで顔以外は戦士にしか見えないんだから、間違えられても仕方ないんじゃないか。
それらのツッコミを俊夫は口にする事なく飲み込んだ。
ゲーム側でそう設定されてるだけなのだ。
本人に突っ込んでもしょうがない。
それにゲーム開始以来、ロクな事が無かったので精神的に疲れていたというのもあった。
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先ほどのやり取りの後、やや気まずい無言の時間があったが、余計なお喋りをしなかったので歩みはスムーズに進む。
「ようやく森を抜けれたな」
そう口にしたのはフリードだ。
森から抜けた場所は俊夫が森に入ったところではないが、街の外壁が同じように見える程度の距離のようだった。
スタート地点よりも標高が高いのか、角度が変わった影響か街の向こうに海が見える。
「ああ、ようやくだ」
街道と森の間の平地を歩き始める。
木の根っこや小石といった物で歩きにくい地面は、舗装された道路しか歩いた事のない者にとって大きな負担である。
魔神としての基礎能力のお陰か俊夫は疲れを感じてはいなかったが、不慣れな森の中を歩くという行為には精神的な負担を感じていた。
他のゲームであればそういった部分には補正が効くのだが、リアルさを追求したこのゲームにはそのような機能が無いのだろう。
つくづく不便なゲームだなと俊夫は思っていた。
「そういえばフリードに聞きたかったんだけど、セーブやログアウトの方法を知らないか?」
これは俊夫にとって重要な事だ。
チュートリアルキャラと思っているフリードに聞いておかなければならない。
一般的なゲームとは違い、ステータス画面や設定画面の表示すらされないのだ。
このゲームが宿屋や教会でセーブするタイプならば、その場所を聞いておかなければ後々困る事になると思っていた。
もしかすると新たな案内キャラが現れるかもしれない。
しかしそこまでの期待はできないと思っていたからだ。
街に着いたら自由度の名の下にほったらかしになる可能性が高いと考えていた。
だがフリードは何を言っているんだと不思議な表情をしていた。
「なんだそれは? 聞いた事ないぞ」
「そうか……、わからないならいいんだ。すまないな」
「俺にはわからないな。とりあえず宿でゆっくり休んだらどうだ?」
「あぁ、そうだな。ありがとう」
(俺にはわからないと言ってるけど、宿で休めとか言うって事は宿屋がセーブポイントとかのパターンだな。やっぱりチュートリアルキャラに聞いておいてよかった)
俊夫は収穫があった事で安堵した。
一応はヒントが用意されているという、製作者の僅かな良心があった事に。
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しばらく歩くと街の門の前まで来ていた。
門の前には馬車の列と人の列とで分かれており、それぞれ荷物の確認をしているようだった。
俊夫達は列に並ぶ。
(こういうのを見るといくらリアルに出来ていても、やっぱりゲームなんだなと思っちまうよな)
俊夫がそう思ったのは外壁の周囲の感想だ。
外壁で隔てられているとはいえ、現実であれば周囲に建物などがまばらにあるはず。
それが無いのだ。
地平線の辺りにある多くの家が建っている場所が農村で、畑や牧草地でもあるのだろう。
街の周囲と農村地区。
明確に分かれている事がやっぱりゲームだなと思わせた。
「フリード、街の通行料はいつも取られるのか?」
「基本的に街の住人や冒険者は取られないな。そういえばゾルドは冒険者として登録はしているのか?」
「いや、そういったことはまだやってない。街の名前すら知らないくらいだしな」
「えっ、それ本当に言ってるのか?」
『何言ってるんだ、こいつ』
そんな思いがフリードの顔によく表れていた。
フリードの反応を見た俊夫は、無知だと友好度判定にマイナスになったりしても面倒臭いと思い、適当に街の名前を知らなかった事を繕ってごまかそうとした。
「実は魔法っぽいので飛ばされてさ。森の中に転移してたんだよ」
「おいおい、そういう事は先に言えよ。身体は大丈夫そうだが……。一体どこの国から来たんだ?」
「日本って国だよ」
「聞いた事ないな」
「まぁ、観光がてらにいろいろ見て回ってから国に帰るさ」
「知らない国に来たっていうのに気楽だな……」
今の俊夫はセーブポイントに行けば、すぐにでもログアウトできると思っているまま。
大変な事になっているという自覚がない以上、気楽なのも当たり前だ。
お気楽な俊夫の様子を見て、フリードは溜息を軽く吐く。
「この街はポート・ガ・ルーのポルトっていう街だ。2番目に大きい都市で港町だ。東のポール・ランドやソシアと違い魔物が少ないから、観光を兼ねてこっちの事を知っていくには良いだろうな」
「なるほど、それならのんびり自分のペースでやっていくさ」
(もうプレイはしないけどな)
予想以上にこのゲームの出来は良かった。
だがそれ以上に、最初の不快な経験による『こんなゲームやっていられるか』という思いの方が強かった。
「俺は明日の船で国に帰るが、のんびりと旅をするならベルリンにも来てくれ。ベルリンも良い街だからな」
「いつかはそうさせてもらうよ」
(そういやヨーロッパを舞台にって書いてたな。ベルリンがあるって事は、ポート・ガ・ルーはポルトガル。……ポルトは多分そんな街があるんだろう。西の端からスタートって事か。東に行くほどモンスターが強くなるって感じなのかな?)
スタート地点のモンスターは弱く、そこから離れるほどに強くなっていくのだろう。
ゲームによくある仕様だ。
その事も俊夫に、よくあるタイプのゲームだと強く思い込ませた。
「ところでゾルド、そのローブを脱がないのか?」
まもなく検問の順番、というところまで来たところでフリードは問いかけた。
「この服装でなにか問題でもあるのか?」
「あぁ、魔神信奉者にしか見えないからな」
「えっ」
(種族が魔神なんだけど……。もしかして異教徒として排斥されたりするのか?)
俊夫が心配するのも当然だ。
”強そうだから”
なんていう軽い気持ちで選んだ種族が問題になるなんて思いもしなかった。
だが考えてみれば、友好的な種族、非友好的な種族を種族毎に設定されているのは当然だ。
人間と魔物が共存しているようなゲームは少ない。
このゲームでも種族によって友好的になるかどうかのシステムが採用されていてもおかしくない。
これくらいの事は想定してしかるべきであった。
「なぁフリード。それって――」
「次っ」
フリードに問いかけようとしたところで、俊夫達に順番が回ってきた。
俊夫はこのままでは危ないかもしれないと思ったが、ここでどこかへ去る方が怪しい人間だと白状しているに等しい行為で、かえって危険だろうと判断する。
よく職務質問されるので、俊夫はどうすればスムーズに済ませられるかを知っている。
問題はそれをこの格好で活かせられるかどうかだ。
鋭い視線で俊夫を見つめている衛兵をどうやり過ごそうか。
先に行動したのは衛兵だった。
「そいつはなんだ」
「こいつは森の中で倒れてたんだよ。愚者の実を食べてたようでな」
「あぁ……」
最初は鋭い視線で俊夫を見ていた衛兵も、フリードの言葉で俊夫を憐れむような目に変わる。
そして俊夫を見定めるような視線へと変わり――
「冒険者に夢見て家を出てきたってとこか」
――また憐れむような目に変わった。
俊夫の身に付けている者がボロの服だったりすれば別だっただろう。
それならば”まぁ頑張ってね”で終わる話だ。
だが、かなり品質の良さそうなローブを着ている俊夫は違った。
衛兵からすれば、世間を理解していない頭の可哀想な資産家のお坊ちゃん。
そんな印象だ。
憐れむような視線は”大人しく家に居れば良い暮らしできるだろうに”という思いからだった。
「なら冒険者としての登録はまだだろう。通行料1,000エーロだ」
さすがに穏便にやり過ごそうと思っていた俊夫も、ゲームキャラ――それもその他大勢のNPCと思っている相手――に、いわれのない憐れむような目をされた事にイラつきを覚えた。
我慢したのは、ログアウトしてソフトを叩き割ればいいと思ったからだ。
それにRPGの衛兵は初期レベルでは勝てないくらい強く設定されている事が多い。
このゲームで死ぬようなダメージを受けたりしたらどうなるのか……。
それを試すような勇気を俊夫は持ち合わせていなかった。
俊夫は大人しく財布から硬貨を取り出し支払う。
「俺は登録証あるから」
フリードは懐からプレートを取り出すと衛兵に見せている。
すると”入っていいぞ”と衛兵が俊夫達に声をかけた。
(冒険者としての登録証があれば通行料は取られないのか。そりゃ毎回取られてたら雑魚狩りとかやってられないよな)
フリードに聞かれた服装も特に咎められる事なく、街に入る事ができた。
「先にギルドに寄っていいか? セーロの葉を持ったままで食事は嫌だしな」
「もちろん、いいよ」
フリードが先導して歩き、その後ろを俊夫がついて行く。
すぐにログアウトしたいところだが、最後に少しくらいは寄り道してもいいだろうと今は思っていた。
その理由は俊夫の視線の先、街の大通りを歩いている多くの人々だ。
人間、獣人、エルフ、ドワーフ、小人。
だがその外見には大きく落胆する。
首から下は良い。
妙齢の女性は大体がスレンダーであったり、グラマラスな体型をしているので、十分に女性としての魅力を感じられる。
問題は肝心の顔が論外だった。
中には俊夫の目から見ても、美人だとか可愛いと思う顔のつくりの女性もいる。
だがそれは極一部の事。
ほとんどがTHE洋ゲーな造形の顔ばかりで、髪の色も多種多様でカラフル。
俊夫の中で点数をつけるなら、ほとんどが20点以下だ。
これにはただでさえ無くなっていたやる気が、ストップ安から上場停止まで突き進んでしまった。
獣人は犬科や猫科の獣人が多かったが、どれも動物の顔そのままだったので点数をつけるまでもなかった。
(萎えるわー、こんなの。完全日本語化とか書いてたから海外のゲームだったんだろうけど、せめて現実のちょいブスかなレベルで作ってくれよ。そこは力を入れてくれよ、マジでさぁ)
フリードみたいに歪な男キャラの造形に力を入れるくらいなら女キャラにも……。
そう思うのは仕方ない。
ゲームのグラフィックは向上し続けている。
つまり今周囲にいるキャラクター達は――
高画質、高品質のブサイク。
――である。
どうせなら力を入れてくれても良いじゃないかと思うのは、きっと贅沢な悩みではないだろう。
男キャラは微妙な顔でも俊夫は気にしたりはしない。
どうでもいいからだ。
(とはいえさすがにフリードレベルだとスルーできないんだよな。現実で見たらトラウマ物だし。一体冒険者ギルドにいるような連中はどこまで酷いんだろうか。インパクトのある奴がいればいいんだけど)
ここまで酷いなら怖いもの見たさで、ちょっとギルドまで行ってみようという気になったのだ。
きっと話のネタになる。
……そうでも思わないと、このゲームを買ってしまった自分を殴り殺したくなってしまう。
俊夫は一通り周囲を見回し満足した後、前を歩くフリードに声をかける。
「そういえば問題なく街に入れたけど、このローブを着てると魔神信奉者に思われるってどういう事だったんだ?」
これは聞いておかねばならない事だ。
冒険者ギルドでいきなり斬りかかって来られたらたまったものではない。
フリードは後ろを振り向き、俊夫の問いに答える。
「それだけ怪しげな雰囲気を醸し出している真っ黒のローブを着て、禍々しい剣を背負ってたら誰だって思われるさ。もっと普通のローブなら黒でも問題ないんだがな」
「へぇ、それじゃ魔神信奉者に思われてなにか問題でもある?」
「あるさ」
そう言うとフリードはプッと吹き出す。
「冒険者になろうって奴の中にはいろいろ居てな。お前みたいな恰好をして”俺は魔神の生まれ変わりだ”とかいって注目を集めようとする目立ちたがりだったり、腕に自信のある奴はその注目利用して仕官を狙う奴がいるんだ。田舎で魔法の才能があると褒め称えられて、初級魔法しか使えないのに『我は魔道の真理に触れし者』とか勘違いした奴もそういう恰好をしているな。まぁ時々現れるから冒険者歴が長い奴は見飽きてるだろうが」
「マジかよ……」
この世界がどういうストーリーの下、構成されているのかはわからない。
本来の魔神信奉者がどういう扱いかもまだわかってはいない。
だが、俊夫には今わかった事が1つある。
(やべぇ、周りの奴等にに中二病患者とかそっち系に思われてる!?)
魔神信奉者のような服装に、そのような理由があるとは思いもしなかった。
俊夫は思わず周囲を見回すと今まではただ通り過ぎる人にしか思えなかった通行人が、こちらを見て笑っているかのような錯覚に陥ってしまった。
しかしこれは錯覚ではなく事実である。
だが俊夫1人が見られているわけではない。
2メートル近く、肉厚で頭と体がアンバランスなフリード。
170cmほどで怪しい恰好をしている俊夫。
この二人が共に歩いているところは、多種族が生活する世界とはいえ珍しい光景だ。
ちなみに注目の割合は7:3である。
「俺はそういう奴らとは違うよ」
これはゲームでフリードはNPC。
そう思っていても思わず自分はそいつらとは違うと否定してしまう。
「わかっているさ。今言った奴らとは違う感じだしな。案外本物の魔神信奉者、いや魔神そのものだったりしてな」
「ハハハ、だったらどうする?」
「殺すさ」
冗談混じりに聞いてみただけだが、フリードは気迫のこもった顔で返事をする。
かなり大柄なフリードが凄むのだ。
サラリーマンとして、その筋の人間とも交渉をした事もあるが、比べ物にならない圧迫感である。
脅しとして暴力をチラつかせる人間と、暴力を行使するのに躊躇しない人間の違いだ。
俊夫は身動きが取れず、驚きで唾を飲み込む事しかできない。
その様子を見たフリードの顔が和らぐ。
「まぁそんな訳ないだろうが、冗談でも魔神信奉者だと口にするのは止めておけ。本当に殺されても仕方ないぞ」
「わかった、もう言わないよ」
(フリード怖っ……。種族の選択ミスったか、魔神が嫌われている世界観なんだったら種族は黙っておくほうがいいな。いきなり殺される可能性もあったと思えば、今フリードに聞いておいて良かったと思わなきゃ)
魔神と天神。
2種類の神がいるというだけではなく、それぞれを宗教によって対立し信者が対立しているかもしれない。
そういう事を考慮しておくべきだった。
もっとも、たかがゲームと思っているのに、そこまで考えろというのは酷な事である。
俊夫は”天神の方がまだマシだったかな”と後悔していた。
「まぁいずれにせよその恰好じゃ、からかわれたりするのは覚悟しておくんだな」
「あぁ」
それから多少の雑談をしたところで冒険者ギルドの建物に着いた。
フリードが扉を開け先に中へ入る。
中は正面から左側にカウンターなどがあり、右側に酒場のようなカウンターと机があった。
まだ明るいのに飲んだくれている男達がまばらにいる。
(そういえば夕方になってるな。移動時間が結構かかったから仕方ないか)
「ゾルド、お前は冒険者としての登録はまだだろ? 正面のカウンターで登録してこいよ。俺は買い取りカウンターにセーロの葉を持っていくから」
「それじゃ後でまた合流しよう。飯を奢るって約束だったろ」
「わかった。楽しみにしておこう」
そう言い残してフリードは買い取りカウンターらしき方向へと歩いていく。
さっさとセーブして終わりたい俊夫であったが、フリードの機嫌を損ねて宿の場所を聞きそびれる事を恐れた。
だから食事を奢る事を理由に合流しようと言い出したのだ。
別にその辺りのNPCにでも聞けばいいのだが、チュートリアルキャラだと思っているフリードに聞くことに固執してしまった。
毒で体調を崩したことによって、他のキャラに聞けばいいと頭が回らなかったのだ。
フリードを見送った俊夫は正面のカウンターへと進み、列に並ぶ。
しばし待ち、俊夫の順番が来た時。
ピンク色のウサ耳をピョコピョコっと動かす獣人が待ち構えていた。
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