九 過去
小さい頃から、僕をちゃんと見てくれる人は少なかった。
「啓、母さん何も見えないわ」
母さんは、僕が見えたことを話すと、とても困った顔をしていた。
「右目は確かに
父さんは医者に問題ないと言われると、それきり僕には関心を示さなくなった。
自分が人と違うらしいと自覚してからは、僕は無口で無表情な子どもになった。
「お化けはあっち行けよ」
同級生たちは僕を嘘つきだと決めつけたり、赤い目を悪く言って石を投げたりして、それに飽きると、いつしか僕をいないものとした。
「放っといて向こうで遊ぼうぜ」
だから僕はいつも独りだった。
見えるものをひたすら絵に描いた。
紙に描くと捨てられるので、地面に描いた。
「啓。上手だな。絵を描きたければ、私の家で描くといい」
初めて絵をほめてくれたのはお祖父さまで、僕の赤い目もちゃんと見てくれた。
高梨先生を紹介してくれたのもお祖父さまだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます