第4話 安全な部屋で今後の方針を決める

 さて、研究所っぽいところに入ったのは良い。

 あっちこっちぶっ壊されてるのか、ベッドが大半お釈迦の状態である。


 雨風を凌ぐ場とはいえ、これはひどすぎる。強盗が押し入った以上に散らかってたり、一部の部屋の壁が破壊されてたりと、あげれば上げるほどキリがない。


「この有様的に実験体が暴れたんだろうな……ここまで破壊したとなると相当強いぞ」


 恐らく今の俺じゃあ絶対に勝てない。自分の感がそう告げてる。

 敵前逃亡という訳じゃないが、この破壊の有様は相当ヤバイ。

 これは……かなりのレベリング*を必要とするだろう。


 *ネットスラングの一種。レベル上げの意味。


「お、この部屋だけ無事だ」


 運がいいのか、無事な一部屋があった。ベッドは少し破損が見られるが問題はない。鏡もあるし、コスチュームチェンジとかできるのか?まぁ外見の確認くらいはしよう。


「え……」


 鏡を覗く。そこにはアバターの顔じゃなくて、現実の方にいるプレイヤー自身である俺の顔が映っていた。黒髪の癖毛、目は少しクマが出来ている。髭は……毎日剃っているおかげなのかないな。


「…なら筋力の低い俺は何でツヴァイヘンダーを振り回してんだ?しかも鎧着て」


 普通なら重すぎて動けないんだが……学生時代は運動音痴で、鉄棒の逆上がりがまともにできないほどだった。そこで思いつくものがいくつか。


 1.異世界転移の影響でパワーアップした説

 2.そもそも現実での自分の筋力がこの世界では普通説


 今あげられるのはこれだけだ。……後者はないと思うな。ならこの世界の住人は思った以上に弱いという感じになる。前者の方が納得していいだろう。


 とはいえここはどういう世界かはまだ理解してない。仮にArmsFantasyの続編なら、それなりに時が経過してるはずだ。おっと忘れてたな。AFではラスボスと裏ボスがいるが、それだけで終了という訳じゃない。


 自分がラスボスをやる事もできるシステムも存在し、プレイヤー自身も悪役をできる。まさに何でもできるゲームだった。まぁ俺はやらなかったけど。


「マジかぁ……」


 テンプレにはテンプレなんだけど、実際自分が転移者になるって突然すぎる。

 今思えば、あのメール自体も怪しかった。普通の人なら続編のテストプレイヤーの推薦とかと間違えるだろう。うん、普通に間違えちゃうよね。


「となると、これはなりきりと本音を気を付けなきゃいけないな……」


 漫画や小説で読んだことあるけど、大抵の異世界は階級制度とかあるから迂闊に私語が喋れない。今までやったことあるオンラインRPGではたまにしか見かけないけど……。


「ふぅ……」


 少し深呼吸し、ベッドの上に座る。柔らかい感覚があるが、鎧を着ているからなのかギシッと軋む音が鳴る。


「此処から先をどうしようか……」


 特に神様とか見なかったし、どんな使命を持たされるとか無かったから、次にどうしようか今後の方針を決めていない。


 ソロで冒険者をやって魔物討伐して英雄をやるか?いや、それとも「俺TUEEEE!」をやって調子に乗るか?


 いや、それでも最終的に魔王とかそう言う奴をぶっ飛ばしてお姫様と結婚ENDとか正直気が引ける。自由がないじゃないか!


「……よし!こうなったらとことん強くなって、俺なりのフリーダムな生活を手に入れるぞ!」


 要するに、この世界に永住する羽目になったも困らないように地盤を固めることが最初の目的だ。そこから元の世界に帰る方法を探せばいいしな。


「ん?一ヵ所だけ、梯子が立てかけられてるな」


 ベッドから立ち上がり、気になったところを見る。梯子がかかってるし、地下へと続く穴がある。


「研究施設にありがちな設定。地下施設か」


 下を覗き込んだ後、勇気を振り絞って飛び降り、普通に着地する。

 普通なら梯子を使って降りろよとか言われそうだが、気にするな!

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