第220話

 俺も女神像の前で跪き、祈りを捧げた。それはもう心から熱心に祈った。『コーラス様。アリア様。この世界が平和であります様に。俺がだらだらして、、ゴロゴロして、酒飲んでぐうたらしていられます様に・・・。』え、俺の欲望丸出しじゃないかって?みんなだって初詣に行って自分の願い事をお祈りして来たでしょ。それとおんなじよ。


「さて、それじゃ俺も女神像に触ろうかな。」


 俺が近づいて女神像に触れると、あろう事か女神像が薄ぼんやりと光った。眩い程輝く訳では無いが、建物神殿の中では十分すぎる位目立つ。ナニコレ?


「あ、見て!ジローが女神像に触れたら像が光ったわよ!」


 目撃したテレーズ殿下が大騒ぎを始めたよ。止めて、そんなに大事にしないで。


*****


(驚いてる、驚いてる。どうだジロー、気に入ってくれたか?)

 まさかとは思いますが、この光はコーラス様のお御業でしょうか。


(その通りだ、ジロー。この像にはアリアの神気が込められていたから、それを上書き出来るくらいのあたしの神気を込めておいたんだ。)

 それで、なぜ私が触れると光るのでしょうか?


(ただ単に神気を込めるだけじゃつまらないだろ?ちょっと驚かせてやろうかとおもってさ。)

 そう言うご冗談はお止め頂けないでしょうか。下界で私が新たな勇者に祭り上げられてしまいます。


(勇者になっちまえば良いじゃねえか。別に魔王はもう居ないんだし。お前が好きにしてたって、文句はいわれないだろ?)

 問題大ありです。私が新しい勇者などになったら、ヘルツ王家の立場はどうなるのですか。私を王室に取り込もうとするか、下手したら幽閉。最悪のばあい、暗殺されるかも知れません。あー、このままでは私死んでしまうな。お助け下さい、アリアさまー。


(分かった、分かったよ、ったく。アリアに言いつけるのは止めてくれ。それで、どうして欲しいんだ。)

 私が触れた時だけ女神像が光る様では困ります。そうですね、コーラス様へ信仰の特に厚い者や、あの事件の関係者が触れると同じように光るとか。例えば・・・、カタリナとか。


(じゃあ、カタリナが触っても同じく光る様にしておくよ。カタリナっと。はい、できた。)

 こういったお戯れは出来ればおやめ頂きたいのですが。


(良いじゃねぇか。あたしとお前の仲だろう?それじゃあ、またな)


*****


 コーラス様とのやり取りはほんの一瞬の事だったが、こっちの騒ぎの始末をしないと。カタリナには悪いけど、お仲間になって貰おう。


「殿下、ご静粛に。これは女神様への信仰が特に厚い者や前回の奇跡に関わった者が触れると淡く光る様です。」

「何でジローがそんな事分かるのよ。」

「女神様から啓示を受けました。私でなくとも、シスターカタリナが触れても光る筈です。」


 巻込んじまって、ホントにごめんよ。カタリナさん。

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