第219話
「なーんだ、やっぱり好きなんじゃない・・・って、それは一旦置いといて。じゃあ、新しい勇者様ってジローなの?」
いったいどの様な脳内変換をしたらそう言う答えにたどり着くのでしょうか、テレーズ姫様。勇者じゃないって説明聞いていなかったのですか。
「殿下。確かに私はその場に居合わせましたが、私が勇者に選ばれた訳ではありませんよ。シスターカタリナがそう説明してくれたと思いますが。」
「えー、だって回復魔法を使ってカタリナさんの命を救ったのでしょう?」
「応急手当はしましたが、回復魔法は女神アリア様の奇跡です。」
「えー、あやしいなー。」
余計な詮索は止めて下さい、テレーズ殿下。ほら神殿の看板にも書いてあるでしょ。あの時、司教様と子爵様に手柄を譲っておいて良かったよ。
「教会の皆様にお聞き頂ければわかる事です。」
だいたい俺は勇者って柄じゃないからね。勇者って言ったら、若くてイケメン。剣と魔法に優れていて、ハーレムパーティーって相場が決まってるんだぞ。まあ魔法は良いとして、こんな草臥れたおっさんには似合わないよ。え?アンちゃん?確かにアンちゃんは居るけど許嫁だもん。一人だもん。決してハーレムじゃないよ。
「確かに、居合わせた冒険者を通して女神様が奇跡を起こされた、って書いてあるわね。」
「そうでしょう、そうでしょう。全くその通りです。」
「そうやって懸命に否定しようとするところが益々あやしいのよね。」
余計なところで頭が回るな、この姫様は。だからと言って、俺は絶対認めたりはしないが。
「あちらの女神像が聖遺物ですよ。ささシスターカタリナ、ご案内して。」
もうとっとと拝観してこの場を離れよう。そうしよう。
「テレーズ殿下、あまり時間を取り過ぎますとこの後の日程が厳しくなります。お早くお願い致します。」
「分かったわよ。そう急かさないでよ。」
テレーズ殿下は女神像に祈りを捧げ、その後女神像に触れられた。安産に御利益があるって、いったい何を願うんだろう?子宝に恵まれます様に、かな?そう言えば、アンちゃんもここを通る度に毎回熱心にお祈りしてるよな。何をお祈りしてるんだろう。職業がら、やっぱり怪我の回復とかかな?
「そう言えばアンちゃんも何時も熱心にお祈りしてるけど、何を祈ってるの?」
「え、そ、それは秘密よ。お祈りした内容は心の中にしまっておくものよ。」
そう言うとアンちゃんはそそくさと行ってしまった。うーん、そう言うものなのだろうか。
「ジローさんはお祈りされないのですか。」
「私も女神様に祈りを捧げますよ。」
カタリナに促されて、俺も祈りを捧げた。俺も子宝を祈った方が良いのかなぁ。
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