第215話

「ジロー、お前の意見を聞きたい。こいつらの事をどう考える?」


 生け捕りにした奴らを尋問したけど、大した情報は得られなかった。逃げ出そうとした奴らは、金で雇われた傭兵崩れのゴロツキ共だったからだ。正規の兵士と思われる者は最後まで戦って死んだか、自刃した者が殆どだ。2人瀕死の状態で捕まった奴がいたが、結局何も話さないまま死んでしまった。


「結局殆ど何も聞き出せなかったんですよね、アンドレ隊長。」

「ああ。残念ながらその通りだ。」

「私の想像になってしまいますが、よろしいですか?」

「構わない。何か気付いた事が有ったら聞かせてくれ。」

「私は以前、この鎧に似た物を見た事が有るのです。」


 そう、以前ビーム辺境伯領に攻め込んで来たウェーバー帝国の兵士が身に着けていた物だ。帝国兵は同じように鉄の鎧で武装していたっけ。今回襲って来た奴らの鎧には帝国の紋章なんかは無いけど、形はそっくりだ。


「今回、陰で糸を引いているのはウェーバー帝国じゃないでしょうか。帝国の紋章は無いですが、鎧の形とかはそっくりですし。」

「だがここはテスラ王国だぞ。」

「帝国とテスラ王国は密約を結んでいると言う噂があります。ここを治めている領主は貧乏男爵ですから、金を掴ませて協力させたのではないかと思います。」


 ヘルツ王国とベクレル王国だって同盟を結んでいる。それはここテスラ王国を仮想敵国とみているからだ。ヘルツ王国とベクレル王国の絆をいっそう強めるためにテレーズ殿下がお輿入れされる訳で、帝国にしてみれば面白くないだろう。


「結局なにも証拠が無いので、私の憶測にすぎませんがね。」


 テスラ王国がどう思っているかは知らないが、帝国はまだ領土的野心があるのだろう。あー、またビーム辺境伯の所に攻めて来ないといいなあ。そう言えば、あの門番のおっちゃんは元気にしてるかな。


「それでは、私も後片付けの手伝いをして来ます。」


 そう言って俺はアンドレ隊長と別れて、穴を掘っているベクレル兵士達の所へ行った。こんな大人数の死体なんて運べないし、大体俺達はお姫様ご一行だよ。死体なんて運んで行けないよ。変な噂が立ったらどうするよ。証拠品として剣や鎧を少し持って行くだけだ。


「俺が穴を掘りますんで、皆さんは骸を穴に放り込んで下さい。」


 俺は土魔法でデカい穴を掘った。戦いの時に色々見せたので今更だ。放っておくと魔獣が寄って来たり疫病が発生したりするので、さっさと埋めてしまった。


*****


「ねえマルグリット。もう戦いは終わったのでしょう?外に出ても良いかな?」

「いけません、姫様。後始末が終わればすぐに出発です。大人しくしていて下さいませ。」

「えー、ちょっと外の様子を見に行くだけだよー。」

「駄目です。あの様なものを見たら、夜眠れなくなってしまいますよ。」

「平和のために戦うお姫様なんてカッコイイじゃない?」

「そんなものは物語の中だけのお話です!」


 馬車の中ではテレーズ姫様とマルグリットさんの攻防戦が続いていた。頑張れマルグリットさん。応援してます。

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