第209話
海鮮料理。この世界にも生魚を食べる風習はあるのだろうか?醤油もわさびも見た事無いから、あまり期待できないな。あったら是非食べてみたいが、食中毒とか寄生虫とか御免だし。そんな事で回復魔法使うのもどうかと思う。治ると思うけどさ。
「アンちゃん、醤油とかわさびって聞いた事ある?」
「ショウユ?ワサビ?ごめんなさい、聞いた事ないわ。」
食べること大好きなアンちゃんが知らないなら、やっぱりこの世界には無いのだろうな。醤油くらいなら俺の魔法で作れないかな?発酵食品だし。いや駄目か。俺の魔法は酒特化だしね。酒が出て来るトンデモ魔法だから、特に発酵させてる訳じゃ無いし。
「じゃあ、米は?」
生魚を食べる事は無くても、焼いたり煮たり蒸したり揚げたりする料理はある訳でしょ。そうしたら米飯が食べたくなるのは当然の成り行きだよね。
「遠くの国で作ってるって聞いた事あるけど、見た事はないわね。ジローだって、市場で見た事ないでしょ。」
「・・・確かに。」
市場で見かけたら絶対買ってると思うわ。俺にちゃんと飯が炊けるかは別として。炊飯器なんて便利道具は無いし、飯盒炊飯もした事無いなあ。
「ねえジロー。今日はどうしちゃったの?食べ物の話ばっかりで。お腹空いてるのかな?」
「そうだね。何かお腹が空いて来た気がするよ。」
「じゃあ、先ずはご飯食べに行きましょ。」
俺の手を握ると、アンちゃんは勇んで歩き出した。アンちゃんにうまく乗せられた気がしないでもないけど、まいっか。
そんなこんなで、束の間の休日は過ぎて行った。勿論、アンちゃんと美味しい物を食べに行ったさ。チャンスを逃すようなアンちゃんじゃないよ。
*****
「それではテスラ王国の皆様、ごきげんよう。」
そう言って別れを告げると、テレーズ殿下は馬車へと乗り込んだ。殿下、使節団のお役目ご苦労様です。この様子だと上手く猫被れたのですね。え?疲れた?どうせお役人さんが事前準備をして、この後もお役人さんが交渉するんでしょ?そんな事言ってたらお役人さんが泣きますよ。
「そうは言っても、よその国に来るなんて初めてなんだからー。窮屈なのよ。」
「そのような事を仰っていては、ヘルツ王国へお輿入れできませんよ。」
テスラ王国の次はいよいよヘルツ王国だからか、マルグリットさんの
「じゃあ早速ジローとアンナにあたしの愚痴を聞いて貰わなくっちゃ。」
ほらやっぱり猫を被り続けた反動が来た。って言うか、暇つぶしを通り越して愚痴を聞くお役目とは。もうそこには魔法は存在していない。けれども、魔法の練習と言う名目で宜しいですよね。愚痴を聞かされるくらいなら、嫌でも練習して頂きますよ。
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