第208話
テレーズ殿下の魔法はあまり順調とは行かないが、旅の日程の方は順調に進み、テスラ王国の王都ノクミマへと到着した。
「テレーズ殿下。王都に泉は無いと思いますが、別に泉でなくても水が湧き出る様なものがあればそれを良く見て頂ければと思います。噴水などがお勧めです。」
「ジロー、お前達は一緒について来てはくれないのか?」
「殿下、私はベクレル王国に仕える者ではございません。ベクレル王国の使節団に同行する訳には参りませんよ。」
という事で、俺とアンちゃんは一旦ここでお別れです。使節団に混ざってお城に入る訳に行かないもんね。行きたくも無いし。いやあ、久しぶりの休日だよ。
「アンちゃんはこのお休みどうするの?」
「そうねえ。先ずは不足している必需品の買い出しでしょ。後は何か美味しい物を食べたいかな。あ、ジローは飲み過ぎちゃ駄目だからね。」
いきなり釘を刺されてしまう俺。何時だってそんなに飲んでないでしょ。飲んでないよね?飲んでないってば。
「この前来た時に食べたお菓子おいしかったなー。ちょっと多めに買って旅の途中で食べようかしら。」
「割れやすいお菓子だから、途中で粉々になっちゃうんじゃない?」
名物料理かぁ。俺、何か忘れている様な気がするな。名物料理・・・。そう言えばベクレル王国は海に面しているから、海鮮料理を食べようと思ってたんだった。
「ああ、思い出した。」
「どうしたのジロー。」
「俺は、俺は、大変な事を忘れていた・・・。」
「いったいどうしたのよ。」
「俺、ベクレル王国に行ったら海鮮料理を食べようと思ってたのに、すっかり忘れてた。」
「カイセン料理ってどんなものか分からないけど、お魚を使った軽食なら食べたわよ。」
「何だって?」
流石はアンちゃん。俺の知らない所でそんな物を食べているとは。俺も誘って欲しかったよ。
「市場で買い出ししている時に、ちょうど屋台があったのよ。魚の切り身を焼いたものと野菜をパンに挟んだヤツ。味付けは塩コショウと酸味の効いた果汁だったわね。美味しかったわよ。」
なんとなく
俺ががっかりしていると、アンちゃんがニマニマしながら言って来た。
「私の事いつも食いしん坊だって言ってるけど、ジローだって食いしん坊じゃない。」
「そりゃあ誰だって美味しい物を食べたいと思うでしょ。それに俺はアンちゃんより食べる量は少ないよ。」
「ひっどーい。まるで私が大飯ぐらい見たいじゃない。」
いや、実際その通りじゃないですか。何て事は口が裂けても言えない。俺も胃腸を丈夫にする薬酒でも作って、寝る前に飲む様にしようかな。
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