第206話

 あんまり変なな事を言って整合性が取れなくなると困るので、俺は今までして来た話しをする事にした。嘘つくなら一貫性が大事だよ。最後まで嘘をつき通せば、それは本当の事になるのさ。


「私の流派はコーラス流でございます。女神コーラス様の教えでは、魔法においてはイメージする事が大切で呪文は重要視されておりません。」

「そうなんだー。あたしにも出来るかなぁ。」

「テレーズ殿下もより良くより強くイメージされれば、水魔法も上達されるかと思います。」


 俺はテレーズ殿下に飲水の魔法で最も基本的な両手で水をすくう形をしてもらった。


「殿下、その掌から水が湧き出るイメージで魔法を使ってください。」

「分かったわ、やってみる。」


 でも直ぐには上手く行かない。まあ、俺も直ぐに上手く行くとは思ってなかったけど。エリック殿下も最初苦戦してたよね。エリック殿下方と同じようなアドバイスをしてみよう。


「テレーズ殿下は泉をご覧になった事はありませんか。」

「小さい頃に森に行った時に見た事があるわ。」

「その時の水が湧き出すイメージで水魔法を使ってみて下さい。」

「分かったわ。でもあれって不思議よねー。どうして水が湧き出して来るのかしら。」

「魔法も同じように不思議なものですから。泉の様に掌から水が湧き出すイメージです。」


 子供の頃の記憶を思い出しているのだろうか。テレーズ殿下は目を閉じて集中している。そして目を開くと飲水の水魔法を発動させた。


「どう?さっきより量が多くなってない?」


 テレーズ殿下が両手のひらを合わせた中一杯に水が溜まっていた。でも姫様のお手ては小さいから、未だカップ3/4ってところかな。それでもさっきより増えているのも確かなところ。


「お見事です、殿下。先ほどより水の量が増えていますね。」

「でもまだジローには敵わないわね。」


 負けず嫌いなんだろうか、この姫様。教えて直ぐに同じレベルになられたら、俺の立つ瀬がないじゃない。


「これから練習して行けば上達しますよ。」

「あと、難しいのよね。」

「何がでしょうか?」

「今まで呪文を唱えて魔法を使っていたでしょ。だから、黙って魔法を使うのに慣れなくて。」


 なにか少し誤解されている様だな。魔法を使う時、別に無言無詠唱でなきゃならないって事は無いんだよね。長々としたよく意味の分からない呪文は要らないって言うのが本当のところだよ。


「テレーズ殿下、全く無言でなくてもよろしいのですよ。むしろ短い単語とイメージを結び付けた方が覚えやすいと思います。」

「そうなのー。あたし、コーラス流って無詠唱でやるものと思ってた。」


 テレーズ姫様、別にその辺りの決まりは無いので、もっと自由にやって頂いて良いのですよ。

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