第205話
「アンちゃんはテレーズ殿下とどんなお話をするのさ?」
明日からテレーズ殿下のお相手をする事になった俺達は、作戦会議を開いた。俺達二人しか居ないからそんな御大層なもんじゃないな。立ち話です、ハイ。
「そうねぇ。私がお話出来る事と言ったら、体さばきとか・・・。やっぱり剣術関係になっちゃうわね。礼儀作法なんかはマルグリットさんの方が詳しいでしょうし。」
「やっぱりそうだよねぇ。となると、俺はやっぱり魔法かなあ。出発前にも何か教えて欲しいと言われているしねぇ。」
テレーズ殿下が使える魔法は水魔法だったよな。馬車の中でやるから、火とか土で無くて良かったかも知れないな。火事になったり、中が泥だらけになったら一大事だ。水魔法なら濡れても乾かすか、最悪俺の脱水魔法で何とかなりそうだし。うん、エマ姫様みたいに大量に水を出さなきゃ大丈夫だろう。エマ姫様は今頃どうなさっているかな。何故だろう、なんだかあっちも心配になって来たぞ。
*****
そして俺の当番の日がやって来た。辺りを見回して余計な人が居ない事を確認。馬車にササっと乗り込む。
「それでは本日の暇つぶし・・・、いえ魔法の練習を始めましょう。」
「前にも話したけど、あたしって魔法が得意じゃ無いのよ。」
「殿下は水魔法が使えるのですよね。それでは飲水の魔法でこのカップに水を満たして頂けますか。」
先ずはテレーズ殿下がどの程度魔法を使えるのか腕試しから。飲水の魔法は一番ポピュラーな水魔法だから、先ずはこの魔法からね。エリック殿下やエマ姫様ともやったなぁ。いやあ懐かしい。
様子を見ているとテレーズ殿下は何か小声でぶつぶつと唱えている。これが良く言われている呪文と言うものなのだろう。俺に呪文を聞かれても、呪文無いしなぁ。聞かれたらどう誤魔化そうか。誤魔化すの無理だな。ある程度正直に言うしかないな。そんな事を考えているうちに、テレーズ殿下の呪文は終わった様だ。
「水よ、湧き
するとテレーズ殿下の持ったカップにちょろっと、半分行くか行かないかくらいの水が溜まった。
「どうかしら、ジロー。」
「おお、水が出せるとは素晴らしいですね。旅をする時には水は貴重なのですよ。」
俺はせめてこのカップになみなみと水が満たされるものと思っていたが、現実は厳しかった。俺やエマ姫様を基準に考えちゃイカンのですね。大丈夫ですよ、テレーズ殿下。俺は褒めて伸ばすタイプですから。
「ジローもやって見せてよ。」
「分かりました。」
俺は別のカップを持つと、水魔法でカップを満たした。おっと、馬車が揺れるとこぼれそうだ。飲んじゃお。
「やっぱり魔法使いを名乗るだけあって、この程度は余裕なのね。あたしとは全然違うわ。呪文も唱えないし。」
やっぱり呪文を唱えないところが気になりますか、テレーズ殿下。さて、どう言い訳けしようかな。
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