第203話
「えー、だって暇だったんだもん。」
とは、今回の騒ぎに対するテレーズ殿下のお言葉だ。お姫様、いくらお暇を持て余していらっしゃっても、碌に乗った事も無いミュエーに乗って走り出すとは・・・。下々の者が苦労致しますのでおやめ頂けませんか。
「アンちゃんのお陰で助かったよ。」
「そうね。私も殿下を無事にお助け出来て良かったわ。」
「俺はアンちゃんも落っこちるんじゃないかと思って、冷や冷やしたよ。」
アンちゃんはちゃんと鐙を履けていたから踏ん張る事が出来た。自分に合った道具って大切だね。こういう事を言うとテレーズ姫が『あたしに合わせた鐙を・・・』って言い出すから黙っておこう。もっと大きくなってからですね。って言うか、お姫様って乗馬しても良いの?もっと優雅に乗るならアリなのかな?
「姫様、朝の体操だけは大目にみますが、これからは昼間のパンツスタイルは禁止に致します。良いですね。」
「はーい。」
「お返事は”はい”です。」
「・・・はい。」
あっちではテレーズ姫がマルグリットさんに叱られている。流石に今回は目に余るものがあったのだろう。いつもは温和なマルグリットさんも厳しい表情をしている。いいぞマルグリットさん。もっと言ってやって下さい。
「良いですか姫様。今回の最終目的はヘルツ王家へのご挨拶ですが、途中のテスラ王国へもベクレル王の代理として訪問しなければなりません。確りなさいませ。」
「はー・・・、はい。」
マルグリットさんって怒らせると怖い人なのかもしれない。テレーズ姫と一緒に居るアンドレ隊長も、黙って小さくなってるもんね。
*****
なんだかんだハプニングはあったものの、漸くテスラ王国との国境までやって来た。今夜泊まる次の街はもうテスラ王国だ。その日の夕方、テスラ王国の国境の街サウンウ・ショオへ到着した。
「ベクレル王国の使節団の方ですね。テスラ王国へようこそ。」
「ありがとうございます。こちらにいらっしゃるのが、使節団団長のテレーズ殿下です。こちらはテスラ国王より頂いた
俺たち冒険者や商人なんかは税金を支払って街の中へ入るのだけど、公人は色々と手続きがあるみたいだ。めんどくせ。まあ別の国の偉い奴が来たらそれなりの対応をしないと不味いのか。テレーズ姫、王族だしね。
という事で、今晩はテレーズ殿下とその供回りご一行様はお貴族様のお屋敷へ、それ以外の人達は近くの宿屋へ宿泊だ。勿論、俺とアンちゃんも宿屋組だ。オレタチヘルツ王国カラキタ。俺たちは冒険者よ?ベクレル王国の外交まで責任持てないもんね。親善大使、頑張って下さいテレーズ姫様。
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