第198話

 俺たちはマルグリットさんに案内されて、談話室?みたいなところへ連れて来られた。俺たちこんな所まで来ちゃって良いの?


「お二人をお連れしました。」

「失礼いたします。ジロー参りました。」

「失礼いたします。アンナ参りました。」

「どうぞ、お入りなさい。」


 部屋へ入るとテレーズ殿下がお待ちになられていた。げ、アンドレ隊長もいるじゃないか。護衛だからいて当然か。


「二人とも適当に座ってちょうだい。」

「いえ、このままで結構です。」

「良いから座んなさいって。」


 俺たちは勧められるがままに、ソファーに腰を下ろした。テレーズ殿下、何かさっきの謁見の間と感じが違うなあ。こっちが素と言う訳か?


「では、いつ頃出発のご予定でしょうか?日程をお聞きしても宜しいですか?」

「それより聞きたい事が有るのよ。私ってエリック様の好みに合うと思う?」


 えーと、これからの旅程のお話では無いのでしょうか?


「あたしってこんな感じで、お淑やかって感じじゃないのよね。体を動かす方が好きだし。」

「はあ。」


 やっぱり猫を被っていたらしい。何ですか、殿下は幼い頃森で迷子になって最近お城に連れ戻されたとか、そう言う設定ですか?チラ見すると、マルグリットさんの顔色が悪い。心労お察しいたします。


「あたしは魔法があまり得意じゃ無いのよね。」

「魔法はヘルツ王家のお家芸ですから。その様に心配なされずとも良いと存じますが。」

「あたし、エリック様に嫌われないかなあ。」


 エリック殿下に嫌われないか心配しているあたり、お嫁に行くのが嫌と言う訳ではなさそうだ。良かったですね、エリック殿下。


「エリック殿下からテレーズ殿下の事を宜しく頼むと仰せつかっております。重ねて申し上げますが、エリック殿下はテレーズ殿下を避けられる様な事はなさいませんよ。」

「エリック様から頼まれているなら、この旅の間にあたしにも何か教えてよ。」


 え、旅の合間にですか?また厄介な事を。でも考えてみると結構な日数があるんだよな。一国のお姫様だから当然馬車だけど、俺たちがミュエーでぶっ飛ばすみたいな速度で移動しないし。人が歩くくらいの速度だね。テスラ王国への訪問も考えたら、一か月以上かかる計算だ。


「承知しました。何か一つ位なら。ところで殿下の得意な魔法は何になりますか?」

「あたしは水属性しか持っていないの。」

「エリック殿下も水魔法がお得意ですよ。」

「なにかエリック様を驚かせる様なのがいいなぁ。」


 アンタいたずらっ子かい。何をどんな魔法を強請られるのか、俺は心配になって来たよ。


「俺の弟子に魔法を仕込むのか。これは見ものだな。」

「アンドレに教わっても、剣の腕は少しも上がらないじゃないのよ。」


 テレーズ殿下はアンドレ隊長に剣を習っているのですか?お姫様にしてはお淑やか成分が足りて無いのは、先生を間違えたせいでは無いでしょうか?

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