第197話

「おとう・・・、陛下。私からも彼らに質問して宜しいでしょうか?」


 可愛らしい声が聞こえたぞ。これってやっぱりテレーズ姫だよね?お父様って言いかけてるし。


「テレーズ。聞きたい事が有るなら言ってみなさい。」

「ありがとうございます。陛下。」


 俺は単なる案内役の筈なのに、なんだかテレーズ姫との面接見たいになって来たよ。圧迫面接はご勘弁を。


「ジロー、と言う名前でしたね。ではジロー。あなたはエリック様とは親しいのですか?」

「親しく接して頂いております。ですが、私的な関係ではございませんので、回答に困ってしまいます。」

「エリック様はどの様なご性格なのでしょう?」

「真面目で、色々なところに目配せ出来る方、と存じます。ここぞと言う時には、それを成し遂げる実行力もお持ちかと思います。」


 やっぱり会った事も無い婚約者の事が気になるご様子。普通気になるよな、やっぱり。この世界には文通とか無いのかな?


「そちらの、そうアンナは剣を持っていますがあなたは丸腰。という事は、あなたは魔法使いという事で合ってますか?」


 この姫様はなかなか鋭い所を突いて来るね。おっさん体形の俺がモンクですって言っても信用されないわな。これからは俺も偽装のために帯剣しようか。やっぱり止めよう。アンドレ隊長見たいな奴に斬り掛かられたら、俺死んじゃうし。


「ご慧眼恐れ入ります。確かに私めは魔法使いでございます。」


 あんまり広めて欲しくない事なんだけど。この場で嘘ついたって後で必ずバレるよね。国王陛下の前で嘘なんかついたら、後で処刑されちゃうよ。それもこれもヘルツ王が余計な事を書くからだ。後できつく言って聞かせてやろう。俺の心の中でだが。


「エリック様はやはり魔法がお得意なのかしら?私も・・・。」


 何だろう。最後の方は良く聞こえなかったけど、あれかな。未来の旦那様と同じ趣味を持ちたいみたいな。いや、魔法は趣味じゃないんですけどね。これでも俺の飯のタネだし。


「うむ、もうそんな時間か。ジロー、アンナ、大儀であった。テレーズの案内、よろしく頼むぞ。」

「「畏まりました。」」


 どうやら時間切れの様だ。どこの国の王様も忙しいから。今回はそれに助けられた感じ。一旦客間に戻って、『やれやれ肩凝ったな』なんてやってると、誰か来た様だ。案内の人かな?まさかまたアンドレ隊長じゃなだろうな。


「失礼します。」


 客間に入って来たのはちょっと年嵩のメイドさんだった。お茶なら外で飲みますから、どうぞお気遣い無く。


「私はテレーズ殿下付きのメイドで、マルグリットと申します。どうぞお見知り置きを。この後テレーズ殿下がお二人とお話したいと仰られています。こちらへどうぞ。」


 時間切れで逃げ切ったと思ったが、まだテレーズ殿下との面接は続く様だ。早く解放してください、殿下。俺はお腹が痛くなってきました。

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