第195話

 そんなこんなで、漸くやって来ましたベクレル王国の王都プーレッド・リグー。いやいや遠かったねぇ。お尻はなんとか無事だよ。心配してくれてありがとう。


「今日はもう宿屋に泊まって、明日の朝に王城へ行くとしようよ。よその国ベクレル王国の王城へ行くんだから、ちょっとは身ぎれいにしないとね。」


 俺たちは冒険者。一般人だからお貴族様みたいな服装はする必要が無い、と言うか出来ない。せいぜいが洗濯してキレイにした服を着て行くくらいだよ。


 あくる日の朝2の鐘の時刻、おれとアンちゃんは王門へ出かけた。


「お早うございます。」

「何か用か?」


 俺は門番にヘルツ王国から来た事を伝え、然るべき方へお取次ぎをお願いした。


「またか。お前達も自分たちを売り込みに来たのか?そう言う輩には用はない。帰れ、帰れ。」


 俺としてはこれ幸いとばかり帰りたいところだけど、うちの真面目担当のアンちゃんが何とか説明しようとしている。


「私たちはヘルツ王国から依頼を受けた冒険者です。この度テレーズ殿下ご訪問の道案内役として派遣されて参りました。」

「最近お前たちの様な奴らがしょっちゅう来るんだ。何か証拠となる物は持っているのか。」


 するとアンちゃんは懐から一振りの短剣を取り出して、警備隊の隊長に手渡した。あれはエマ姫様を暴漢からお守りした時に頂いた短剣だ。


「これはヘルツ王国の国王陛下から下賜された物です。これで如何でしょうか。」

「確かにヘルツ王家の家紋が刻まれているな。良いでしょう。少しお待ち頂きたい。」


 さっきよりは態度が軟化したけど、未だ完全には信用されていない感じ。まあ、見た目がおっさんと成人間もない娘さんのペアじゃあね。自分で言うのもなんだけど、異色のペアだよな。改めておっさん、世間の目が気になって来たよ。


 で、待つ事暫し。部下を連れた騎士がやって来た。


「やあ、お待たせしてすまない。こちらへどうぞっ。」


 そう言った瞬間、騎士は抜き打ちでアンちゃんに斬りかかった。アンちゃんは剣の鞘でこれを受け止める。


「何をするのですか。」

「いや申し訳ない。そこそこ腕は立つみたいだな。」


 そんな物騒な試験は止めて頂きたい。俺が斬りつけられてたら、アンちゃんみたいに反応出来ずにさっくり斬られてたかも。

おっさんに反射神経を求めてはいけない。


「隊長止めて下さいよ。この前も同じ事をして大怪我させてたじゃないですか。」


 部下の人がしれっと怖い事を言ってますが。あんたは剣を持っちゃいけない人では?

 

「あいつは使者を騙る偽物だったろう?」


 隊長さんは剣を鞘に収めると、改めて自己紹介をしてくれた。


「私はこの度テレーズ殿下の護衛役を仰せつかったアンドレだ。腕の立つ奴は歓迎するぜ。」


 ざっくばらんな性格の人みたいだけど、酔ったら絶対絡んで来そうなタイプだな。俺の嗅覚がそう教えてくれた。アルハラ反対!お酒は楽しく飲まないとね。

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