第193話
「あれから特に変わった事は無いかい。女神様のお声が聞こえるとか?」
「ご神託を頂く様な事は無いのですが、何と言うか女神様が私を見守って下さっている様な気がします。」
俺がそう言うと、カタリナはちょっと考え込んでから答えてくれた。
「やっぱりアリア様が見守って下さっているんだろうな。」
「それが、その。私にはコーラス様のように感じられるのです。」
「え?奇跡を起こされたのはアリア様でしょ?」
「私も不思議に思うのですが、元々ここはコーラス様を祀った神殿ですし、私もコーラス様に仕える者ですから。」
まあコーラス様はこの世界の主神であらせられるし、アリア様はいつもこの世界にいらっしゃる訳では無いから不思議じゃないか。そんな事を考えていると、突然コーラス様のお声が聞こえた。
(それもあるけどな、アリアがイタズラして何か仕込んでないか見張ってるんだよ。)
神殿だけあってお声が良く聞こえます、コーラス様。それにしてもアリア様がイタズラですか?
(酷いでしょ、ジローさん。こーちゃんったら、こうやって私に意地悪言うのよ。)
(元はと言えば、おまえが眠り薬なんか飲ませるからだろ。)
(いつも疲れたって言ってるから、ゆっくり寝かせてあげたんじゃない。)
(そんな事言って。あたしを抱き枕にしてたくせに。)
(あら、そんな事もあったかしら。うふふ。)
「と、ともかく女神様が気にかけていらっしゃるのは本当らしいね。」
「貴方にも分かるのですか?」
「ほ、ほら俺もあの時居合わせた当事者だから。」
「成る程、そうでしたね。」
「カタリナも言ってた通り、ここはコーラス様の神殿だし。やっぱりコーラス様の神気が強いんじゃないかなー。それでコーラス様を感じるんじゃないかなー。何て言ったって、コーラス様はこの世界の主神だしー。」
俺が女神様の加護を授かっているなんて神殿関係者に知られたら面倒だし。ちょっと強引だったけど、何とか誤魔化せたかな。頼む、カタリナ。もう深堀は止めよう。コーラス様が見ているのは間違いないけど、どちらかと言うと見守られていると言うよりは見張られている感じだよ。余計な事は言わずに黙っとこう。
「あっと、いっけない。私ったら話し込んじゃって。また叱られちゃう。」
カタリナはお勤めの最中だった事を思い出した様だ。話しかけて悪い事をしちゃったかな。
「それでは私はこれで失礼致します。ゆっくり拝観していって下さいね。」
そう言ってカタリナは小走りに駆け出す。いや駆け出そうとしたその時。
「きゃあああぁぁ!」
履いていた靴が脱げて、盛大に転びそうになった。幸いアンちゃんが抱き留めて無事だったけど、やっぱりこの子はドジっ子属性持ちだよ。スカートの丈が長すぎただけじゃ無かったよ。
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