第189話
エリック殿下の許嫁である姫君をヘルツ王国までご案内するため、俺とアンちゃんはベクレル王国へ行く事になった。その事でエリック殿下からお言葉を頂けると言う。そう言う名目で俺たちは王城へ呼び出された。客間に通されて待機していると、殿下がいらっしゃった様だ。何か御用でしょうか、エリック殿下?
「わざわざ呼び出してすまない。ジロー、アンナ。」
「この度はご婚約おめでとうございます、殿下。」
「この婚約自体は私が生まれて直ぐに決められたものだ。正直あまり実感はないのだが、二人には面倒を掛ける。よろしく頼むぞ。」
「承知いたしました。」
止ん事無いお方と言うのはこういうものなんだね。親同士で結婚相手を決めちゃうんだから。おれもアンちゃんに捨てられない様にしないとね。差し当たってドワーフ達に依頼している剣の様子でも見に行こう。どうせ通り道だし。
「それで、お相手のお名前は何と仰るのですか?」
「ベクレル王国第二王女で、テレーズという名前だ。」
アンちゃんってちょっとミーハーなのかな。いやいや、ご案内するのは姫君、つまり女性だからアンちゃんが近くに居る可能性が高いからか。ベクレル王国の護衛もいるけど、何かあったらアンちゃんが真っ先に対応しなきゃならないかも知れないしね。
「二人が出かけてしまうと、魔法を教わる機会が減ってしまうな。ギルバートとエマには謝らないといけないな。」
「それ程楽しみにされていたとは。光栄です、エリック殿下。」
「残念な事だが、私はこれからは魔法の練習をする時間は減るだろう。社交界にも顔を出して知己を広めなければならない。」
社交界かぁ。俺がドワーフ達と酒盛りするのとは訳が違うよな。良く知らんけど、肩凝りそうだ。俺とドワーフ達は全員親友だけど、エリック殿下がデビューする社交界はそうじゃ無いよね。見方も居れば敵も居そうだ。敵に襲われる、なんて事も考えておいた方が良いのかな?
「では出発の前に、エリック殿下にだけ特別授業を致しましょう。お腰の物を少々拝見させて頂けますか。」
一体何するのって言うお顔をされながらも、俺に腰の短剣を渡して下さった。俺は殿下から拝借した短剣をじっと見つめる。殿下もいつも身に着けている物の方がイメージし易いし、練習もし易いだろう。殿下の得意な魔法は・・・水魔法が良さそうだな。
「アイスダガー」
俺は拝借した短剣と寸分違わぬ氷の短剣を作り出した。
「これは?」
「社交界では武器の携帯が許されない場面も御座いましょう。その様な時に、いつぞやの様にお命を狙って来る者が居ないとも限りません。この氷の短剣が有れば、一合、二合くらいは受ける事が出来る筈です。護衛の者が駆けつけるまで時間が稼げればよいのですよ。これは奥の手ですから、余人に知られない様にして下さいね。」
土魔法がお得意なら土魔法で作っても良かったのだけど、機会が有ったらギルバート殿下に教えようかな。
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