第185話

 いつの間にかエリック殿下対ギルバート殿下・エマ殿下連合軍の戦いになってしまっている。いや、戦いじゃなくて練習?遊び?ですけどね。俺としては練習という事でひとつお願いします。


 俺は当初、エリック殿下の水球をギルバート殿下の砂壁で防ぐ、と言う単純な事しか考えていなかった。でもゲームっぽくなっちゃったので、ルールを決めないとね。俺が思い出したのはスポーツ雪合戦と言う奴だ。


「ではルールですが、先ずはこの様なもので如何でしょうか。」


 おれはうろ覚えのルールを元に、簡易的なルールを作ってみた。

・中央に立てた棒を先に取った方の勝ち

・水球が相手に当たったら、当てた方の勝ち

・エリック殿下とエマ殿下の持ち球は10回ずつ

・エマ姫様はギルバート殿下の砂壁で防御する

・エリック殿下はラウンドシールドを使用して防御する


 それでは第一回ヘルツ王国杯争奪、スポーツ雪合戦・・・じゃなかった水球陣取り合戦の始まり、始まり。ちなみに、水球を何回放ったかは、動体視力の良いアンちゃんが数えてます。おっさんは最近目がしょぼついてさ。老眼の始まりかなあ。


「では、始め!」

「よし、行くぞ!」


 先ずはエリック殿下が駆けだした。エリック殿下に向けて水球を放つエマ姫様。しかし水球はラウンドシールドによって防がれた。お返しとばかり、エマ姫様に水球を放つエリック殿下。ギルバート殿下は砂壁を作ってこれを防ぐ。その間に距離を詰めたエリック殿下が棒を引き抜き、先ず1勝。


「兄上、走って来るなんて卑怯ですよ。」

「走ってはいけないと言うルールは無かったぞ。エマの水球もシールドで防いだしな。」


 うーん、ルールの不備を突かれた感じだな。エリック殿下とエマ姫様が駆け足の競争したら、そりゃ姫様勝てっこないわ。


「ちょっとルールを変えましょう。」


・棒の位置を中央からギルバート殿下、エマ殿下寄りに変更


「大体この辺りで公平かな。それでは2回戦、始め。」


 またも駆け出すエリック殿下。負けじと走るエマ姫様。圧倒的に遅いです、姫様。仕方の無い事だけど。でも走りながらも水球を放つ姫様。健気です。思わず肩入れしたくなっちゃう。再びエリック殿下の勝利かと思った時、エリック殿下が盛大につんのめった。その間にエマ姫様が棒を取って、1勝1敗。


「やったな、ギルバート。」

「私もルールを破ってはいませんよ、兄上。」


 見るとエリック殿下の足元に穴が掘られている。ギルバート殿下が土魔法で掘った様だ。またまたルール改定のお知らせ。


・ギルバート殿下が土魔法で穴を掘って妨害する事を認める。ただし1回戦につき1回まで。


 段々とルールが複雑化してくるなあ。誰かこれメモしておいてくれないかなあ。そこのメイドさん、お願いできませんか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る