第184話

 ギルバート殿下も早速堀と土塁を作ってみる。先ずは小さい物からで良いのですよ、殿下。先ずは感覚を覚える事が大切ですからね。後ろで応援していたら、少し静かにしてくれと言われてしまった。解せぬ。まあ、集中したいと言うお気持ちを汲んで、ここはお口にチャック。少し黙って見ていよう。


 殿下の努力の甲斐があって、土塁と言うには厚みが足りないが、その分高さを持たせた壁みたいなものが出来た。思い起こせば、俺も最初はこんな感じだった気がする。殿下が作った壁は丁度子供がひとり隠れられるくらいの大きさだ。おっと殿下、出来た壁を固めるのを忘れないで下さいね。


 本日の前半はエリック殿下の水魔法、後半はギルバート殿下の土魔法の指導をした訳だが、コレ一緒に出来ないかなぁ。お一人ずつだと時間が半分になっちゃうしね。


「エリック殿下の水魔法水球をギルバート殿下の土魔法砂壁にぶつけたらどうなるのかしら。」

「アンちゃんそれだよ。そのアイデアいただき。」


 と言う訳で、両殿下にご提案してみる事にした。


「本日はエリック殿下には水魔法を、ギルバート殿下には土魔法を練習して頂きました。次回は合同練習と致しましょう。」

「私は水魔法、ギルバートは土魔法を練習するのだろう?何をするつもりだ?」

「ギルバート殿下の砂壁を狙ってエリック殿下の水球を撃ち出して頂きましょうか。」


 両殿下とも、えっそんな事するの?見たいな顔をされていたが、特に異論も出なかったので本日はこれで終了となった。


*****


 日は巡って次の練習日。エリック殿下にも砂場にお越し頂いた。


「では先日お伝えした通り、エリック殿下の水球でギルバート殿下の砂壁を狙って頂きます。」

「ちょっと待ってくれ、ジロー。少しルールを変えたい。」


 ギルバート殿下から意見が出された。兄上から一方的に攻撃されるのは面白くない。こちらからも反撃したい、との事。


「それは構いませんが、エリック殿下は土魔法の練習をされてませんし、ギルバート殿下も水球は使えませんよね?」

「そこでだ。私は援軍を用意したんだ。」


 そうこうしている所に、お待たせしましたと言いながらエマ姫様がご登場である。久々の3兄妹揃い踏みだ。いやそれは良いんだけど、姫様は紙風船で攻撃するの?と思っていると、俺に向かって水球が飛んで来た。


「っ。エマ姫様?」

「えへへ。大きい兄さまにおしえてもらったの。わたしもできるようになったのよ。」

「どうだジロー。エリック兄上対私とエマ組の試合だ。」

「承知しました。ではルールを決めましょうか。」


 俺はもう何も言う事はありません。俺もう必要ないんじゃないの、と言うくらい殿下方の成長が早い。姫様、爺はもう楽隠居しても良いでしょうか。姫様のお行儀だけが心配ですが。

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