第178話
さて、休憩をはさんで後半の始まりだ。折角ギルバート殿下とエマ姫様のお二人がいらっしゃるのだから、二人で遊んでもらおう。
「はい、では続きを始めたいと思います。今日は折角エマ殿下もいらっしゃいますので、お二人でゲームをしてみようと思います。」
「なにをするのかしら?」
「このゲームにはエマ殿下が作られた砂山を使います。折角ですから、もう少し大きくしましょうか。」
兄殿下と妹姫の共同作業で砂山を大きくしていく。勿論ギルバート殿下は、手じゃなくて魔法で砂を盛って頂いている。
「ま、こんなもんでしょうかっと。」
俺は最後に少し押し固めて形を整える。良くある円錐形の砂の山だな。俺も随分と昔、浜辺で作った覚えがあるよ。さらに俺は休憩時間中に庭師から貰って来た細い木の枝を差し出した。
「木の枝なんかで何をするんだ?」
「それはですね、こうするのです。」
俺は木の枝を砂山の上にぶっ刺した。つまり山崩しだ。
「これからお二人で代り番こに砂山から砂を取って頂きます。その時、棒を倒さない様に注意してください。ご自分が砂を取った時に棒が倒れた方が負けです。」
俺はお二人にルールを説明した。俺とアンちゃんでやって見せても良いけど、そんな複雑なルールじゃないから大丈夫でしょ。
「勿論、ギルバート殿下には土魔法で山から砂を取って頂きますよ。」
「勿論だ!」
やる気を出している兄殿下だが、先攻はレディーファーストでエマ姫様に譲った様だ。こういう所に育ちの良さと言うか、行儀作法の練習成果が出ているんだろうな。と言う訳で、先攻エマ姫様。お手てが小さいので、一度に多くの砂を掬えないみたいだ。ちょっと不満そう。
「大丈夫ですよ、姫様。まだ始まったばかりですから。」
俺がフォローを入れていると、兄殿下からお声が掛かった。
「エマ終わったか?それでは今度は私の番だな。」
ギルバート殿下はどうやら移植ごてをイメージして砂を掬った様だ。まあ、休憩前にそのイメージで溝堀りしてたしね。結構ごっそり砂を取って来た。そうすると面白くないのがエマ姫様である。その小さなお手てが恨めしい。
「ギルバート殿下。エマ姫様がこてを使う許可を頂けませんか。」
「勿論、構わないとも。こてを使っても良いぞ、エマ。」
俺が仲裁に入り、こて使用の許可を頂いた。そんなルールは二人で幾らでも作れば良いのだけど、なんせ初回だからね。分からないよね。ある程度俺が入ってフォローしないと。保母さんって大変なんだろうな。
何回か順番が回って、だいぶ山も小さくなって来た。棒も今にも倒れそうだ。恐らく後1回か2回で倒れる感じだ。と言うところでギルバート殿下の番。立ち上がって全体を俯瞰してみている。そして徐に魔法を発動。ザクっと砂山を削ると、棒はコロンと倒れた。
「あ、倒れた。という事はお兄さまの負けですわ。」
「ああ、エマの勝ちだ。魔法の制御は難しいものだな。」
あの砂の量だと、こてをイメージして魔法を使ったんじゃないかな。ご自分の手をイメージすれば勝てたのに。はしゃぐエマ姫様を見ながら、俺は結構良いお兄ちゃんなんだなと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます